消化管内科
(1)概要
消化管内科では、消化管疾患全般に対する内視鏡検査・治療を行います。中でも食道、胃、十二指腸、大腸の早期がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:内視鏡を用いてがんのある部分の粘膜下層までを剥離し、病変を一括切除する治療)を積極的に行っています。特に、十二指腸がんに対するESDに関しては、関東のみならず遠方からも患者さんにお越しいただいています。
内視鏡室は全12室備えており、7部屋は一般診療専用(1階)、5部屋は人間ドック専用(健康管理棟3階)です(2025年2月現在)。内視鏡検査・治療機器も常に新しい機器にアップデートするよう努めています。
参考:診療実績
(2)ポリシー
苦痛は少なく、精度の高い検査・治療を目指して
内視鏡検査の主な対象疾患であるがんは、見落とさずに発見しなくてはいけない病気です。消化管内科、内視鏡部では、どのような早期がんも見落とさないよう、精度の高い内視鏡検査を目指しています。同時に、希望される患者さんには積極的に麻酔薬(鎮静薬)を使用するなどして、苦痛の少ない内視鏡検査・治療を心がけています。
(3)特徴
多数の症例数
食道、胃、十二指腸、大腸におけるESDは多数の治療件数を誇ります。上部内視鏡検査は年間18,216件、下部内視鏡検査は年間9,649件となっています(2024年1月~12月)。
参考:診療実績
24時間365日、緊急時への対応
夜間、休日を含めて24時間365日、緊急患者さんの対応にあたっています。急な吐血や下血、内視鏡処置後の出血対応などにいつでも対応できる体制を整えています。
世界各地から研修生を受け入れ
当院の消化管内科には「高い内視鏡技術を身に付けたい」という志を持つ多くの医師が、世界中から見学・研修を受けに来ており、海外医師が常時10名前後滞在しています。
治療同日退院大腸ESDの導入
当院は特に消化器癌内視鏡治療(ESD)の症例数は年間1000例を超え、当科診療の中心となっております。特に大腸ESDについては症例を多く積み重ねています。その多くの経験と技術力から、通常1週間程度の入院を要する大腸ESDですが、患者さんの状態によっては治療当日の退院を導入しております。
経鼻内視鏡によるESDを実施
早期胃がんに対して経鼻内視鏡による(鼻から内視鏡を挿入する)ESDを実施しています。
通常、早期胃がんのESDは、麻酔をかけた状態で口から内視鏡を挿入して行います(経口内視鏡)。しかし、高齢の患者さんの場合、麻酔の負担によって合併症を引き起こすリスクが高くなります。
一方、経鼻内視鏡によるESDは、麻酔薬によって鎮静をかける必要がありません。そのため、高齢の患者さんであってもより安全にESDによる治療を行うための体制を整えています。早期胃がんが発見されても、「高齢だから」という理由で治療を諦めざるを得なかった方々に、遠方からもお越しいただいています。
胃食道逆流症への精査と最新の治療導入
胃食道逆流症(逆流性食道炎を含む)に対する包括的な診断と治療を行っています。原因不明の胸やけや咽喉部不快感などの症状を客観的に評価するため、「24時間pHモニタリング」を導入しています。内服治療で症状改善が得られない場合や薬物療法が困難な患者様には、以下の内視鏡治療を実施します。
- ARMP(Anti-reflux mucoplasty):粘膜を剥離し噴門形成を行い、逆流を防止
- ARMA(Anti-eflux mucosal ablation):粘膜を焼灼し胃酸逆流を抑制
これらの治療は侵襲が少なく、回復が早いことから患者様の生活の質(QOL)の向上に寄与しています。
食道アカラシアの治療導入
食道アカラシアは、食道と胃の接合部が弛緩せず、食べ物が通りにくくなる疾患です。当院では、この疾患に対する診断法として「食道内圧検査」を、さらには治療法としてPOEM(Per-Oral Endoscopic Myotomy)を導入しています。POEMは、内視鏡を使用して食道下部の筋肉を切開し、症状を改善する治療法です。外科手術と同等の効果が期待できる一方で、体への負担が少なく、合併症のリスクも低いのが特徴です。
患者さんの希望を考慮し、麻酔で苦痛を軽減
消化管内科では、患者さんが希望する場合、積極的に麻酔薬(鎮静薬)を使用して、検査・治療を行うようにしています。内視鏡室には専門医資格のある麻酔科医が常駐し鎮静・麻酔管理を行っています。本来麻酔は専門家が行うべきもので(静脈麻酔薬の一種である特にプロポフォールは)、当院は安全性を優先する為に麻酔科と協力体制をとり、安全に検査・治療ができる様にしております。
学会が発行している「消化器内視鏡ハンドブック(改訂第3版)」においても、「プロポフォールを使用した鎮静には内視鏡施行医とは別に、麻酔技術に習熟した医師が専任で鎮静管理を行うことが必要」とされており、本来独立した麻酔管理を行う医師が行うべきものです。
消化管内科を受診される方へ
現在、ほかの病院や診療所の先生にかかっている場合には、これまでの経過をお知らせいただく「診療情報提供書(紹介状)」をお持ちください。それによって、患者さんの病状を正確に知ることができ、不必要な検査や外来通院を減らすことができます。
外来は予約制ですが、予約外でも診療情報提供書さえ持参いただければいつでも受診可能です。予約外の場合はお待ちいただく事がありますが、予約が取れる日まで、不安な日をお過ごしにならない様に必ず来院いただければその日に診察をいたします。
当院の消化管内科には、全国から多くの患者さんにお越しいただいており、「初診から治療を受けるまでの日数が長いのではないか」と心配される方がいらっしゃいますが、ご心配には及びません。検査は数日以内に予約可能、入院によるがんの治療も原則翌週行う事ができます。多いからゆえにそれに対応できる体制をとっておりますので、ご安心ください。
内視鏡Q & A
部長 大圃 研
■ 当科ではオンライン受診相談を行っております。
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外部掲載記事:
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