肺に次いで大腸、胃ががんによる死亡数の上位に

がんと診断された人の数(罹患数)、がんの死亡数、ともに大腸がん、胃がんが上位に並びます。さらに近年は食生活の欧米化などの影響により、食道がんによる死亡数が増加傾向にあります。このように、日本人のがんの多くが消化管に発生していることがわかっています。
胃がんの主な症状は、胃痛、吐き気、食欲不振などがあり、大腸がんは血便、下痢、便秘、体重減少、食道がんでは胸の違和感、食べ物がつかえる感じのほか、胸や背中の痛み、咳などが挙げられます。しかし、いずれのがんも初期段階は自覚症状に乏しく、見つかったときにはかなり進行していることが少なくありません。

一方で、内視鏡による診断・治療技術の目覚ましい進歩により、消化管がんは早期に見つかれば切らずに、高い確率の完治が期待できるようになっています。異変を感じたときはもちろん、定期的ながん検診を通じて病気の早期発見に努めてください。また、喫煙や飲酒、食生活など、がんのリスクとなる生活習慣にも気をつけましょう。

 1位2位3位4位5位
男女計大腸膵臓肝臓
男性大腸膵臓肝臓
女性大腸膵臓乳房

※大腸を結腸と直腸に分けた場合、男性は結腸4位、直腸7位/女性は結腸3位、直腸
 10位/男女計は結腸4位、直腸7位 (国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計」(2019年)より)

充実した検査環境を整え消化器の多様な検査に対応

専用のX線透視室を含めて11室の検査室を備え、消化器のさまざまな検査を行っています。2021年1月から12月に実施した内視鏡検査は、コロナ禍で例年の約半数となっているものの、上部消化管(食道、胃、十二指腸)で9920件、大腸が6436件と豊富な実績を有しています。通常の内視鏡検査で病変が認められた場合は、必要に応じて超音波内視鏡検査を実施しています。超音波下では消化管の壁や血管、リンパ節などを詳細に観察でき、病変が及んでいる範囲などをより正確に把握することで、術前診断の精度向上に努めています。

一方、小腸は5~7mもの長さがあり、口からも肛門からも遠い位置にあるため、以前は内視鏡での検査が困難でしたが、ダブルバルーン小腸内視鏡、カプセル内視鏡の登場によって、直接的かつ詳細な観察が可能になりました。小腸がんはまれな病気ですが、潰瘍や出血性の疾患が見つかることがあり、繰り返す出血や貧血の原因特定に役立っています。なお、カプセル内視鏡検査は、大腸内視鏡が困難な患者さんにも保険が適用されます(大腸に病変があることが疑われる場合のみ)。口からカプセルを飲み込むだけで痛みがなく、通常の大腸内視鏡検査には抵抗がある方にもお勧めです。

がんを早期に見つけるため人間ドックの受診を推奨

当院では近隣の医療機関からの紹介による検査のほか、病気の早期発見を目的とした人間ドックも行っています。上部消化管内視鏡検査は通常コースにて、直腸から盲腸に至る全大腸に対する下部消化管内視鏡検査は大腸がんコースにて実施しています。検査に伴う痛みや苦痛が心配な方は、希望があれば鎮静薬を用いて眠ったような状態で検査を受けていただくことができます。治療の必要がない状態を維持するために、あるいは治療が必要であっても内視鏡による切除で根治をめざせるように、定期的な検査でご自分の体の状態を把握しましょう。