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がんゲノム医療(医療関係者向け)

はじめに

NTT東日本関東病院は、がんゲノム医療中核拠点病院である東京大学医学部附属病院(以下 東京大学病院)と協力し「がんゲノム医療連携病院」として「がんゲノム医療」を実施しています。

  • 2018年11月1日より先進医療B 「Todai OncoPanelの開発に関わる臨床性能試験」として東大オンコパネル検査の運用を開始しましたが予定登録数を満たす状況となり現在は登録を終了いたしました。
  • 「OncoGuideTM NCCオンコパネル システム」「FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル」検査の保険承認により、に2020年2月17日から当院でも保険診療で対応いたします。

パネル検査およびがんゲノム医療にはいくつかの注意点があります。最初に簡単にその注意点をお伝えします。

【注意点】

当院のがんゲノム医療は、

  • 後述の適応基準を満たす方のみを対象としています。
  • 現時点では「検査」が主体です。
  • 「治療」が治験など研究で実施され、保険診療で受けられない可能性があります。
  • 「治療」に結びつく結果とならないことがあります。
  • 「検査結果説明後」は主治医の先生のもとに戻ることになります。
  • ご家族・ご親戚が、がんになりやすいという遺伝子の情報が付随的にわかってしまう可能性があります。

がんゲノム医療とは

がん細胞にはその特徴を決める複数の遺伝子の変化があると考えられています。その遺伝子変化は個体間で異なるため、その情報を調べ診断や個々にあった治療法を行う医療が「がんゲノム医療」です。方法としては、がん細胞(と正常細胞)からDNAを抽出し、代表的ながんに関わる遺伝子の配列変化を調べます。その検査に用いるのがパネル検査であり、現在いくつかの有用なパネルが報告、運用されています。当院は東京大学病院と連携し、2種類のがん遺伝子パネルのいずれか一つを用いて解析を行います。この解析を行うことによってがんの特徴を調べ、遺伝学的な診断やその特徴に対して創薬されている治療薬がないかを調べる個別化医療です。

がんゲノム医療でわかること

病気の詳しい診断やより適切な治療の決定に役立つ情報が得られる可能性があります。検査を受けられた時点で承認されている薬がなくても、将来的に適用可能となる薬剤(治験等を含めて)が見つかる可能性があります。しかし、一人ひとり、がん細胞や正常細胞の遺伝情報は異なっているため、詳しい解析をしたとしても新しく有益な情報を得られることがなく、この医療に参加しても同じ治療法や治療方針になる場合もあります。その場合、何か新しい情報がわかるかもしれないと期待していた患者さんにとってはご期待に添えない場合があります。これまでの臨床研究において、遺伝子の変化に合う薬剤を使用できた患者さんは、約10パーセントです。

【当院で行っているがん遺伝子パネル】どちらか1つを選択

NCCオンコパネル Foundation One CDx
手術や生検で取った検体を使用 腫瘍検体と血液 腫瘍検体
解析遺伝子数 114遺伝子 324遺伝子
結果返却期間 必要な検体を提出から、4-6週間
生まれつきがんに罹りやすい体質をもつ遺伝子の変化
(生殖細胞系列)
13遺伝子 はっきりしない

がんゲノム医療で注意が必要なこと

検査によっては、がん細胞の遺伝情報だけでなく正常細胞の遺伝情報も同時に調べます。その時に正常細胞にも遺伝子の配列変化を認めることがあります。それは、現在起こっている症状とは関連がない、全く別の疾患の原因遺伝子の異常が明らかとなることがあります。これを、二次的所見といいます。その遺伝情報ががんに関連したもので、遺伝子がうまく機能していない事が原因で、がんを発症した可能性もしくは他のがんを発症しやすい可能性が高いという事がわかる事があります。患者さん自身にとって、他のがんのリスクを理解し、早期発見につなげられると考える方にとってはメリットになるかもしれませんが、それを知ることをデメリットと考える方もいます。さらには、ご兄弟やお子さんなど血縁者も同じようにがんになりやすい体質を受け継ぐ場合があります。この遺伝情報を知ることで、健康管理に繋がる等、知る有用性が高いと考えられる場合があります。二次的所見の報告を受けない選択をすることも可能ですが、判明した結果が健康に重大な影響を及ぼし、かつ対処法のある疾患につながる場合があります。そのような情報がわかることもありますので、検査前にしっかりと説明を受けたうえで同意書にその意思を記載する必要があります。

また病理検体の量が少ない、劣化でDNAの質が検査に耐えられない場合は検査自体ができない場合があります。

適応基準

この検査の対象となる方の要件は以下の通りです。

  • 悪性腫瘍と診断されている(癌腫、肉腫いずれも含むが血液腫瘍を除く)、18歳以上の方
  • 治癒切除不能又は再発により、標準治療による根治が難しいと考えられる方
  • 標準治療がない、標準治療が終了している、もしくは終了が見込まれる方
  • 全身の状態が比較的良好である方
  • がんを含む病理標本があり、採血(OncoGuideTM NCCオンコパネル システムのみ)も可能な方
  • 同意が得られている方

紹介・予約は主治医の先生から当院の医療連携室を通して行いますので、主治医の先生のご承諾が必要です。

主治医の先生は、「がんゲノム検査希望の患者さんを紹介いただく主治医の先生へ」を参照ください。

検査の概要

検査の概要図

第3回がんゲノム医療中核拠点病院(仮称)等の指定要件に関するサブワーキンググループ
「がんゲノム医療提供体制のあり方について」より

患者さん、検査の流れ

検査の流れ

  1. 患者さんから希望があった際に、検査の適応条件に該当するかどうか、また、病理検体の条件を確認してください。詳細は「がんゲノム検査希望の患者さんを紹介いただく主治医の先生へ」をご参照ください。
  2. 主治医の先生より、医療連携室へお電話 にて連絡をいただき、「がんゲノム医療希望」である旨を伝えてください。
  3. 医療連携室より適格基準の確認案内と申し込み方法の説明をします。
  4. 主治医の先生は、診療情報提供書(受診希望日、可能日を記載)、紹介時チェックシート( 資料(106KB))を記載していただき、医療連携室にFAX(03-3448-6071)してください。
  5. FAXの内容を確認しました後に、予約日を主治医の先生へ医療連携室よりご連絡します。
    予約は腫瘍内科がんゲノム外来(木曜日 午前 完全予約制)になります。

費用

【予約日①】は完全予約制のため、33,000円(税込)/1時間の費用がかかります(がんゲノム相談、病理検体確認など含む)。【予約日②】以降は保険診療で行われます。【予約日①】は自費診療ですので、当日当院で他の診療科を受診すること、検査や処方を受けることはできません。
予約日②: 通常の診察料に検査代8万円(3割負担の場合 24,000円)
予約日③: 通常の診察料に結果説明代480,000円(3割負担の場合 144,000円)
*限度額適用認定証の手続きを事前にしておくことをおすすめします。

検査結果

東京大学病院での専門家会議を経て当院【予約日③】でお伝えいたします。できるだけご家族とご一緒に来院していただく必要があります。

ご説明する予定の内容は、
① がん細砲の遺伝子変化に関連して、今後の患者さんの治療の選択に有用だと判断された情報
② 次世代に受け継ぐ可能性のある遺伝子変化情報です

説明するのは、解析したデータの全てではありません。病気・健康状態等を評価するための情報として、その精度や有用性が十分でないものは、説明内容から除かれます。

検査結果説明後、主治医の先生に報告書を当院から送ります。今後の治療方針については、主治医の先生と患者さんとの話し合いになります。

がんになりやすい体質と関連する遺伝子の配列変化を認めた場合、同意書に結果の開示を希望するとされた時には結果をお伝えします。ただし、それを知ることによって検診方法を変えるなど対処法があるもの以外は、たとえその情報を知りたいと同意書に記載された場合でも開示いたしません。知りたいとお答えになられた方の場合も開示前に再度結果をお知りになりたいか確認いたします。

また、たとえ二次的所見として、血縁者に同じようながんの体質になりやすい遺伝子の配列変化を認めたとしても同意書に結果を知りたくないと記載されている場合はお伝えいたしません。

※遺伝情報を次世代に伝える役割を持つ細胞を生殖細胞といいます。二次的所見として、原因遺伝子が見つかった場合に、お伝えするのはこの生殖細胞系列にある遺伝子を指します。

遺伝カウンセリング

生殖細胞系列の遺伝子にがんになりやすい体質と関わる遺伝子が分かった場合(遺伝性腫瘍)、事前に同意書に結果を知りたいと記載していた場合には、その生殖細胞系列の変化の可能性について当院の医師よりお伝えします。その情報を知った上で、より詳しい遺伝カウンセリングを希望される場合は、ご自身はもちろん家族も一緒に遺伝カウンセリングを受けていただくことができます。遺伝カウンセリングは専門部門(メディカルオンコロジーセンター遺伝相談部門)にて、自由診療として受けていただくこととなりますため、カウンセリングにかかる費用は、ご相談を受けた方々にご負担いただきますことをご了承ください。初診時には初診料および相談料で約13,200円(税込)かかりますが、2回目以降は3,300円(税込)です。

ゲノム医療についての相談

患者さん、ご家族のがんゲノム医療の相談については、がん相談支援センター(TEL:03-3448-6280)に平日9:00~16:30にご連絡ください。

*予約取得は診療や検体情報の確認があるため主治医の先生からのみになります(医療連携室)。

参考資料・ホームページ