20年以上の間、第一線で活躍する内視鏡のスペシャリスト・大圃研医師。食道、胃、十二指腸、大腸の早期がんに対するESDは、難易度の高い症例であってもクオリティー、スピードともに高水準を実現しています。それを可能にしているのは独自に磨いた技術と、医療への妥協ない姿勢。医師23人、臨床工学技士兼内視鏡技師3人(※2022年9月時点)のスタッフを束ね、常に新しい取り組みに挑戦する姿に迫ります。
領域の広い消化管を網羅しESDの高い実績を誇る
消化管内科では、主に早期消化管がんに対する内視鏡検査・治療を行っています。内視鏡治療のメリットは、粘膜の表面にとどまり、リンパ節や他の臓器への転移がなければ、開腹手術をせずに根治をめざせることです。一般的には6日ほどで退院でき、定期的な通院は不要です。また、2㎝以上の大きながんもESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)で一括切除することが期待できます。ESDは患者さんの身体的負担が少ない一方、技術的な難易度の高い手技。レンズ越しに患部を確認し、右手はスコープ、左手はアングルという装置でスコープの先端を操作しているため、例えば大腸の動きを手で止めることもできず、その動きに合わせて1㎜もない粘膜下層をはがしていきます。片手でリンゴの皮をむくイメージですね。さらに難しいのが十二指腸。複雑に曲がりくねった先にあるので操作性が悪く、裂孔や出血などの偶発症が起こることもあります。当院では日々、難易度・リスクともにさまざまなケースを想定しながら技術研鑽に努めることで、患者さんに安心して治療を受けていただける体制を整えています。
息の合ったチームワークで素早く的確な治療をめざす
当院では1年間に胃311件、大腸425件ものESDを行っています(2021年1月~12月実績)。これだけ多くの治療に対応するためには、正確性と同時に効率性を上げることが重要です。当科は主治医の一存で動く組織ではなく、受付から病棟、検査室まで関わるスタッフが自分で考え、個々の役割を全うするシステマチックな分業制を採っています。チームのことを全員が把握しているので、誰かがいなくても別の人が対応できて、現場が止まることがありません。また、向上心の高い人が集まっており、一人ひとりが自分の技量を磨く姿勢が、適切でスピーディーな治療につながっていると思います。スタッフの絶妙なアシストもあり、難しい症例も含めて治療時間が非常に短いのも当科の特徴です。
一人でも多くの患者さんを少ない負担で救いたい
ESDは胃、食道、大腸に保険が適用され、急速に普及しました。しかし、「がんが大きい」「難しい場所にある」といった場合は開腹手術を選択するケースが多くあります。当院では技術的な理由で難しいとされる症例であっても、可能な限りESDで対応します。実際、20㎝超のがんをESDで一括切除したこともあります。現在、主に遠方に住んでいらっしゃる方のための、セカンドオピニオンを目的としたオンライン受診相談も行っております。僕たちが最後の砦になる気持ちでいます。内視鏡治療を受けられる可能性を諦めないでください。
僕のもとには、国内はもちろんアジア、欧米を中心に世界中から医師が内視鏡の勉強に訪れ、内視鏡を究めて帰っていきます。ライバルが増えるわけですが(笑)、ここで得た技術を別の医師に伝えてくれたら、より多くの患者さんを小さな負担で救うことができますよね。それに、他の医師や患者さんから頼りにしてもらえるのは、非常にありがたいことです。治療の相談も、難しければ難しいほど「僕が何とかしなければ」と思える。必要とされることが、僕の原動力なのだと思います。
先生にお話を聞きました!
消化管内科部長 大圃 研
1998年日本大学医学部卒業後、JR東京総合病院に勤務。内視鏡の黎明期から独自の技術を磨き、消化管の早期がんに対するESDの先駆的存在に。2007年当院に入職し、消化管内科部長・内視鏡部部長に就任。連日多くの内視鏡治療に携わる傍ら、国内外の人材育成にも力を注ぐ。日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医。