近年、国内でも患者数が急速に増加する逆流性食道炎。良性ではありますが、胃酸の逆流による症状はQOLを著しく下げるため、積極的に治療しましょう。正しい治療をするには、似て非なる疾患との鑑別が重要です。
逆流性食道炎とは
食道と胃のつなぎ目にある筋肉が緩むことによって、胃の内容物や胃酸が食道に逆流し、胸やけなどの症状を引き起こす病気です。通常、下部食道括約筋は食物が通過するとき以外は締まっていますが、加齢や腹圧の上昇、ピロリ菌がいないことなどが原因で緩んだままになると、逆流を抑えられなくなります。胃酸による炎症を放置した場合、日常生活に影響が出るだけでなく、食道腺がんのリスク要因にもなることがわかっています。
逆流性食道炎は良性疾患でも放置は禁物
不快な症状が続いたらまずは地域のクリニックへ受診を
命に関わることはないものの、QOLは著しく低下する
逆流性食道炎の代表的な症状は胸やけですが、一時的な胃酸の逆流による胸やけは健康的な人にも起こるもので、短時間で回復して繰り返さなければ問題ありません。しかし、食事の内容や食べ方、生活習慣などを見直しても症状が改善しないとき、あるいは胃薬などを飲んでも症状が残るときは注意が必要です。長期的に胃酸の逆流が続くと、酸に耐性がない喉の粘膜が受けるダメージが深くなり、症状が悪化します。場合によっては、「食べ物が通りにくい」「夜眠れない」といった合併症を起こすことも。
NTT東日本関東病院では良性疾患にも積極的に対応
逆流性食道炎は良性疾患で、健康診断や人間ドックの内視鏡検査で発見されても「そのうち治るだろう」と軽視する方が少なくありません。しかし、悪化すると生活の質が著しく低下するため、症状があるときは早期の検査と適切な治療をおすすめしています。当院の消化管内科は、食道、胃、十二指腸、大腸の早期がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などを行っています。ESDは患者さんの身体的負担が少ない一方、技術的な難易度の高い手技ですが、当院では患者さんに安心して治療を受けていただける体制を整えています。そして、良性疾患に対する治療も積極的に行っていますので、安心してご相談ください。
先生にお話を聞きました!

消化管内科部長 大圃 研
1998年日本大学医学部卒業後、JR東京総合病院に勤務。内視鏡の黎明期から独自の技術を磨き、消化管の早期がんに対するESDに関する造詣が深い。2007年当院に入職し、内視鏡部部長に就任。連日多くの内視鏡治療に携わる傍ら、国内外の人材育成にも力を注ぐ。日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医。

消化管内科 木本 義明
2014年名古屋大学医学部卒業。虎の門病院を経て、2017年よりNTT東日本関東病院消化管内科勤務。2022年より1年間、昭和大学江東豊洲病院消化器センターにて良性疾患の研究・治療に携わり、2023年よりNTT東日本 関東病院にて現職。野球、サッカー、ラグビーなど多様なスポーツに造詣が深い。47都道府県を車で回ったこともあるアクティブなドクター。得意分野は消化管の早期がんの診断と治療、さらにはがん(悪性腫瘍)以外の良性疾患も。