呼吸器外科

(1)概要

当院は東京都よりがん診療連携拠点病院に指定されており、主に原発性肺がんに対して地域がん診療の中心的な役割を担うべく外科治療を行っています。原発性肺がんのほか、転移性肺腫瘍、自然気胸、縦隔腫瘍などの手術を行っています。

(2)ポリシー

標準治療を基本とした、一人ひとりに適切と考えられる手術方法の提案

呼吸器外科では、エビデンス(医学的根拠)に基づいた標準治療を基本としたうえで、患者さん一人ひとりの全身状態に合わせ、最適と考えられる手術を目指しています。「どうすれば最小限のダメージで手術ができるか」「最適なアプローチ方法はどれか」などと考慮しながら、患者さんごとにカスタマイズした手術計画を立てています。
どれだけ技術が高くても、考え方が間違っていたり自分勝手だったりしては、まったく患者さんのためにはなりません。手術の正確性は維持しながらも、患者さんのストレスをいかに少なくすることができるかを常に追求しています。

(3)特徴

ロボット支援で行う胸腔鏡下肺葉切除術の実施

呼吸器外科では、2018年9月からロボット支援下胸腔鏡下肺葉切除術を開始し、12月より保険診療を開始しました。ロボット支援下手術では、術者がロボットの動きを司る機械を両手で操作して手術を行います。組織を引っ張ったり掴んだりする鉗子は、術者の両手の動きに合わせて細かく動くうえに関節もあるため、精密に動かすことができます。
またロボット支援下手術では、両眼視できる特殊なカメラを使用します。これによって、通常の胸腔鏡手術ではモニター上に平面でしか映し出されなかった術野が、ロボット支援下手術では立体的に見えるようになりました。
このように、ロボット手術には多くの利点があります。多くの患者さんがロボット支援下の手術の恩恵を受けることができるよう、今後さらに技術を高めていきたいと考えています。

VAL-MAP(気管支鏡バーチャル3D肺マッピング)

肺がんが小さかったり、胸膜表面から離れた場所にあったりする場合、手術で十分に触診できず、切除すべき範囲が把握しづらいことがあります。
このようながんに対して、かつては胸部に針を刺し、病変部に金属のマーカーを留置する「術前CTガイド下マーキング」が行われていましたが、空気塞栓という合併症を引き起こす恐れがありました。
そこで開発された方法が、VAL-MAP(気管支鏡バーチャル3D肺マッピング)です。VAL-MAPでは、術前に気管支鏡を使ってインジゴカルミンという色素を肺表面に吹き付けて印をつけます。2〜6箇所の印を同時につけることができ、切除すべき範囲を正確に捉えることが可能です。


受診される方へのメッセージ

呼吸器外科では、新しい技術や経験によって培った技量を駆使して、患者さんの身体的負担を軽減できるような手術の提供に努めています。
また、さまざまな新しい治療法を積極的に導入しています。治療法の選択の際には、それぞれのメリット・デメリットをきちんと提示したうえで、患者さんご自身で納得のいく治療法を選んでいただけるよう心がけています。

部長 松本 順

 

「メディカルノート」掲載インタビュー

疾患啓発記事:
肺がんの外科手術-治療法や術後について
ストーリー:
「呼吸器外科医として働くこと。それが私の幸せです」

低侵襲・機能温存手術ロボット手術センター