肺がんってどんな病気?

肺がんは、気管支や肺胞にできる悪性腫瘍

肺がんは、気管、気管支、肺胞の細胞ががん化したもので、年間約12万人もの人が新たに肺がんと診断されています。治療法の進化で死亡率は減少傾向にありますが、今なお年間約7万人が亡くなっており、1998年に胃がんを抜いて以降は最も高い死亡率であることに変わりはありません。男性では死亡率1位、女性も死亡率2位であり、早期発見·早期治療が望まれます。(国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計」(2019年)より)

肺がんの最大の原因は喫煙予防と治療には「卒煙」が必須

喫煙習慣のある高齢者で肺がん罹患率が上昇

肺がんは、粉塵の舞う職場環境や食生活、放射線などさまざまな要因によって引き起こされ、中には原因不明のものもあります。しかし、肺がんに罹患する原因の大部分を占めているのは喫煙です。2019年の「国民健康·栄養調査」および「国民生活基礎調査」によれば、全国の成人の喫煙率は男性27.1%、女性7.6%、男女16.7%で、男女ともに緩やかな減少傾向にあります。にもかかわらず、70歳以上の高齢者では前立腺がんと並んでがんに罹患する人が後を絶ちません。背景には、若い頃からの喫煙習慣の積み重ねがあると考えられます。肺がんにならないようにする最善の方法は、喫煙をやめること。「卒煙」こそが最大の予防策なのです。

外科的治療か、内科的治療かステージと個別の背景で判断

早期発見でリンパ節や遠隔臓器への転移がない肺がんには、外科手術が選択されます。外科手術のアプローチには「開胸手術」、「胸腔鏡下手術」、ロボットによる胸腔鏡下手術である「ロボット支援下胸腔鏡下肺葉切除術」があり、ステージと患者さんの年齢や体力、高血圧症や糖尿病といった合併症の有無によって最善の術式を選択します。なお、発見した時点ですでに進行していて手術が困難な場合は、薬物療法による内科的治療が選択されます。近年は抗がん剤に加えて、特定の遺伝子を調べて適切な薬剤を投与する「分子標的薬」と、がん細胞が免疫を低下させる動きを止めて緩やかに免疫を高める「免疫チェックポイント阻害薬」が選択肢に加わり、個別のがんの性質に適した薬剤を使うことで治療効果の維持が望めるようになりました。

肺がん治療の選択肢

外科的

開胸手術
肋骨と肋骨の間を大きく開いて、目視で肺の手術を実施。がんの広がりやリンパ節への転移の有無を調べ、がんを切除する方法で、主に進行がんで行います。

胸腔鏡下手術
脇に3~4か所、小器具を出し入れする小さな穴を開けて手術を行います。開胸手術に比べて傷が小さく、身体への負担を軽減できます。

ロボット支援下胸腔鏡下肺葉切除術
手術を行う医師がロボットを操作して病巣を取り除きます。特殊なカメラを使用することで術野が立体的に見え、死角が少なくなります。

内科的

分子標的薬
特定の遺伝子の働きをピンポイントで阻害します。これにより、肺がんの性質に応じた薬を投与する個別化治療が可能になりました。

免疫チェックポイント阻害薬
免疫を調節する「免疫チェックポイント」の働きに対するがん細胞の妨害を防ぎ、免疫力を高めてがん細胞を攻撃する薬です。

殺細胞性抗がん剤
化学物質でがん細胞を攻撃し、死滅·抑制させる従来型の抗がん剤です。正常細胞も攻撃するため、脱毛や嘔吐といった副作用が見られます。