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口唇口蓋裂による鼻の変形(唇裂鼻)の治療|形成外科医が解説

口唇口蓋裂に伴う鼻の変形(唇裂鼻)とは?

口唇口蓋裂に伴う鼻の変形は「唇裂鼻」と呼ばれ、鼻尖や小鼻の左右差、鼻孔縁の下垂などを特徴とします。幼少期に行われる初回口唇裂手術によって基本的な鼻の形態は作られますが、成長とともに非対称が目立つようになり、成人期に外鼻修正を希望される方も少なくありません。

【症例】鼻尖・鼻孔縁の挙上

上段:術前 下段:術後6ヶ月の症例写真

上段:術前 下段:術後6ヶ月

概要

この方は「完全唇顎口蓋裂」の診断で、口唇裂、口蓋裂そして顎裂の形成術を受けています。その後、成長とともに鼻の非対称を自覚され、外鼻の形態改善を希望して来院されました。

術前診察および分析

生まれてすぐに行われる初回の口唇裂手術では、分離した唇を縫合することで、離れていた小鼻が引き寄せられ、鼻の基本的な形態が形作られます。しかし、口唇裂手術によって小鼻の位置が改善されても、皮膚・鼻腔粘膜の組織量の違いや鼻軟骨の左右差により鼻尖や鼻孔縁の非対称は通常残ります。特に鼻尖は左右一対の鼻軟骨によって支えられており、口唇裂ではこの軟骨の位置や形態に左右差が生じることが問題になります。多くの場合、この方のように軟骨の左右差によって裂側の鼻先が下がって見えます。唇裂に伴う外鼻変形の修正手術では、裂側の鼻先を持ち上げて左右のバランスを整えることが重要なポイントとなります。

手術治療

鼻尖や鼻孔縁の左右差を改善する目的で手術を行いました。操作は鼻尖周囲に限られると判断したため、外表に傷を作らない鼻柱切開を伴わないクローズド法を選択しました。肋軟骨で作成した細片を用いて鼻中隔軟骨を延長し、その先端に裂側の軟骨を縫い付けることで、垂れ下がっていた裂側の鼻先を持ち上げました。下から見た際に裂側の小鼻が沈み込んでいたため、肋軟骨ブロックを移植し、小鼻の位置を持ち上げました。正面から見た際に、上唇の中央部分のボリュームが足りず歯が見えていたため、脂肪を移植して自然なふくらみを整えました。術後1週間で抜糸を行いました。術後1ヶ月時点ではまだ腫れが残っていますが、術後3ヶ月頃には形態が安定してきました。

補足説明

初回口唇裂手術に伴う外鼻形成について

口唇口蓋裂治療の最初のステップとして、哺乳機能および外観の改善を目的に、離開した唇を修復する初回口唇裂手術が行われます。口唇裂手術では、分離した唇を再建することにより、鼻の基本的な形態が形作られます。しかし多くの場合、唇の手術のみで十分な鼻の対称性を得ることは難しく、これまで歴史的にさまざまな工夫が試みられてきました。近年では、外鼻形態のさらなる改善を目的として、口唇裂手術と同時に外鼻形成術(primary rhinoplasty)を行う施設が増えてきています。

唇裂に伴う外鼻変形の特徴の一つは、裂側における鼻孔縁の下垂であり、鼻全体が垂れ下がって見える点にあります。初回口唇裂手術に併施される外鼻形成術では、この鼻孔縁の下垂を改善する目的で、健側の鼻孔縁を参考にしながら、裂側皮膚に新たな切開を加える方法が一般的に用いられます。切開部位で新たな鼻孔縁を形成し、健側と対称的な形態を目指しますが、実際にはいくつかの問題点が存在します。

一つ目は後戻りの問題です。術後早期には良好な対称性が得られているように見えても、長期経過において裂側の鼻孔縁が再び下垂し、元の位置へ戻ってしまう場合があります。二つ目は切開線による瘢痕の問題です。切開線が鼻孔縁と一致しない場合、瘢痕が表面に露出し、整容面で問題となることがあります。

唇裂に伴う鼻変形は、皮膚の問題にとどまらず、鼻軟骨の形態異常や鼻腔内組織量の左右差など、複数の要因が重なり合って生じます。これらの要素の中には、初回手術の段階で十分な修正が困難なものも少なくありません。そのため、初回手術のみで全ての変形を解決しようとするのではなく、成長が完了した年齢で外鼻修正術を行い、鼻形態のさらなる改善につなげるという視点が重要だと考えます。

唇裂外鼻修正は口唇口蓋裂治療の最終段階に位置づけられる治療です。その効果を最大限に引き出すためには、初回手術における外鼻形成を、将来的な修正を見据えたデザインおよび手技に留めておくことが望ましいと考えます。