ペインクリニック科
(1)概要
ペインクリニック科は、腰椎椎間板ヘルニアなどによる腰痛、頚椎症などによる首・肩・腕の痛み、三叉神経痛(三叉神経痛の治療について)など、さまざまな痛みを生じる病気の診療を行っています。また、痛みを伴う病気だけでなく、多汗症や赤面症、付随運動を伴う病気や麻痺を伴う病気も、当科で診断・治療しています。
ペインクリニック科で行う治療の基本は、神経ブロックという注射の治療です。神経ブロックとは、痛みを和らげる薬液を注入し、痛む神経の周辺や神経そのものにアプローチする治療方法です。神経ブロックは、注射後短時間で作用するという特徴があります。
ほかにも、患者さんの状態や病気、ご希望などを伺いながら、薬物治療やリハビリテーション、手術治療など、さまざまな治療方法を実施しています。
(2)ポリシー
ペインクリニック科では、痛みの原因探索と並行して、痛みを軽減するための治療を行っています。従来の医療では、腰痛などの慢性的な痛みがある場合、その原因疾患を診断することが重視されてきました。しかし、患者さんにとっては、原因以上に痛みそのものが問題になっていることがよくあります。当科はこのような観点に立ち、早い段階で痛みを軽減する治療を行い、患者さんの生活の質(QOL)を改善することを目指しています。
(3)特徴
腰痛治療に用いられる神硬膜外ブロック
当科を初めて受診される患者さんのうち、もっとも多いのは腰の痛みや下半身の痛み(腰下肢痛)を訴える患者さんです。腰痛に対してよく選択される治療法は、硬膜外ブロックと呼ばれる神経ブロックです。硬膜外ブロックとは、痛む神経近くの硬膜外腔に局所麻酔薬などの薬液を注入する方法で、交感神経の作用を遮断したり、感覚神経の異常な興奮を鎮めたりする作用があります。硬膜外ブロックは、特に椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症に対し、最初に試みられることが多い治療法です。
慢性的な頭痛に対する治療選択肢
長く続く慢性頭痛には、片頭痛や群発頭痛などの血管性頭痛や、緊張型頭痛などがあります。
脳の血管が拡張することで起こる血管性頭痛には、内服薬を使った薬物治療や、星状神経節ブロックと呼ばれる神経ブロックを選択することが一般的です。
後頭部の筋肉の緊張と関係している緊張型頭痛には、星状神経節ブロックを用いつつ、痛む部位に焦点を当て、他の神経ブロックを組み合わることがあります。緊張型頭痛に伴い精神的な落ち込みなどの症状も生じている患者さんには、精神安定剤などを処方することもあります。
慢性頭痛はすぐに消失する痛みではないため、当科では日常生活の工夫や頭痛との付き合い方などのアドバイスも行っています。
痛みを伴わない病気にも対応
当科では、多汗症や顔面神経麻痺、けいれんを伴う病気、一般に自律神経失調症といわれる病態など、多様な病気・症状に対する治療を行っています。多汗症の治療には、内服薬や外用薬を用いた薬物治療、星状神経節ブロック、ETSという手術などがあります。また、重症の顔面神経麻痺の患者さんのうち手術が必要な方には、責任を持って専門の医師を紹介しています。
受診される方へのメッセージ
長く続く痛みは、精神的な落ち込みや、ほかの痛みにつながることがあります。たとえば、肩こりを我慢し続けるうちに、首や背中の痛み、吐き気が生じたというケースも多くみられます。痛みによる悪循環を招かないためにも、我慢しすぎず、早い段階で対処することが理想的です。たとえば、数日安静にしていても腰痛がおさまらない場合などには、ペインクリニック科の受診をおすすめします。
部長 安部 洋一郎