脳神経外科

(1)概要

脳神経外科は、ガンマナイフセンター・脳血管内科・脳神経内科と連携しながら神経疾患の診療にあたっています。たとえば、迅速かつ的確な診療を要する脳卒中・てんかん発作などの神経救急から、高度な治療技術を要する脳腫瘍までを専門に治療しています。
当科では、クモ膜下出血、脳動脈瘤、脳動静脈奇形や脳出血などの脳血管障害、聴神経腫瘍や髄膜腫などの頭蓋底脳腫瘍・良性脳腫瘍、神経膠腫や転移性脳腫瘍などの悪性腫瘍、三叉神経痛(三叉神経痛の治療について)や顔面けいれん、脊髄腫瘍・脊髄動静脈奇形などの※手術治療を行っています。

*2021年1月〜2021年12月 手術件数:416件

(2)ポリシー

患者第一、安全性・専門性の向上を重視した医療の提供

私たちは、「患者さんが自分の家族であったらどうするか」と常に考えながら治療にあたっており、長期的によりよい結果を生み出すことができるよう、さまざまな工夫を行っています。たとえば、手術は経験を積んだ術者が中心となり行い、麻酔中も脳の機能を監視する電気生理モニタリングやナビゲーションシステムなどを用いることで、手術の安全性・確実性を高めています。

(3)特徴

精度高く、安全な手術を目指す取り組み

脳の手術では、脳に障害を残さないことが大切です。そのため、当科では、なるべく脳を傷つけずに病変に近づくことができるよう、顕微鏡を用いて細かい部分まで確認しながら手術を行っています。
このように精度の高い手術を行うことができるよう、当科の医師は、日頃から顕微鏡を用いた手術操作の研鑽を積んでいます。たとえば、肉眼では確認できないほどの髪の毛よりも細い糸を用いて、顕微鏡下で縫ったり縛ったりという操作を自在に行うことができるよう日々訓練を行っています。

複数の診療科・多職種の連携を実現

脳の病気の治療では、病気そのものだけでなく、全身状態や職業などの社会的な背景、またご自宅の環境などさまざまな社会的側面からの検討も重要になります。そこで、脳神経外科では、脳神経内科・脳血管内科・リハビリテーション科などほかの診療科や医療スタッフ、当院の社会への窓口である総合相談室なども交えたカンファレンスを毎日行っています。患者さんについて情報を共有することで、皆が一丸となった診療を提供することができるよう努めています。

脳卒中など救急患者さんの受け入れにも対応

当院では、脳卒中ホットラインを運営しており、24時間365日、近隣の医療機関や救急隊からの連絡を当院の医師が直接受け、スムーズに患者さんを受け入れられるような体制を築いています。当科では、このような脳卒中ホットラインによって受け入れた患者さんの緊急手術にも対応しています。


脳神経外科を受診される方へ

脳神経外科の領域では、脳腫瘍や未破裂脳動脈瘤など、顕微鏡を用いた全身麻酔下の開頭手術を必要とするケースがあります。当科の医師は、脳をなるべく傷つけないよう精度の高い安全な手術を行うことができるよう日々研鑽を積んでいます。
手術の経験を積んだ医師が在籍しており、ノウハウの蓄積にも力を入れています。たとえば、脳神経外科部長である井上の生涯手術経験蓄積数(1997年5月~2021年1月現在)は開頭脳動脈瘤クリッピング1000例、開頭脳血管バイパス手術400例、頚部内頚動脈血栓内膜剥離術500例、開頭脳腫瘍摘出術400例、開頭脳内血腫除去術600例です。
また、近隣の脳神経外科の医師からの、大型の脳動脈瘤や脳腫瘍(頭蓋底脳腫瘍手術、聴神経腫瘍手術等も含む)、若年者のもやもや病に対する脳血管吻合術等、手術難度の高い症例の紹介も増加傾向にあります。
脳腫瘍など開頭術が避けられない状態の患者さんに対して、どんな状態であっても真摯に相談に乗りますので、何でもご相談ください。

部長 井上 智弘

 

「メディカルノート」掲載インタビュー

疾患啓発記事:
未破裂脳動脈瘤に対する治療とは? 開頭クリッピング術による手術について
レポート・インタビュー:
海外で脳血管バイパス術の技術・知見を伝える――​​井上智弘先生の取り組み
ストーリー:
脳神経外科医の宿命を背負って手術を続ける覚悟がある