肝胆膵内科

胆道がん

胆道とは

胆道とは胆汁の通り道の事を指し、胆管、胆のう、十二指腸乳頭部の総称です。(図1)胆汁は消化液であり肝臓で1日に500ml程度作られます。胆汁は肝内の胆管を通って胆のうに蓄えられ濃縮されて総胆管、乳頭部を通って十二指腸に流れて消化を助けます。ここに発生する悪性腫瘍を胆道がんと言います。胆道がんは発生部位によって肝内胆管がん、胆管がん(肝門部領域胆管がん、遠位胆管がん)、胆のうがん、乳頭部がんに分けられています。

胆道
図1

胆道がんについて

胆道がんは聞き慣れない病気かもしれませんが、決して珍しいものではありません。年間23800人程度の方が新たに胆道がんと診断されており、2022年時点でがんによる死亡原因の6番目に位置するがんです。50歳代から増え始めて70歳代、80歳代の高齢者に多く、胆管がんと乳頭部がんは男性、胆のうがんは女性に多い傾向がみられます。また、胆道がんは膵がんに次いで治療成績が悪く診断してからの5年生存率は20%程度であり治療が難しいがんです。そのため早期に発見して治療を行うことが非常に重要です。これまでの研究で「胆石症」、「肥満」、「脂質異常症」、「胆のうポリープ」等に当てはまる方は胆道がんになる危険性が高いので定期的に人間ドックなどを受けることをおすすめいたします。なお、最近では印刷業務で使用されているジクロロメタン、ジクロロプロパンを長期間使用することで胆管がんの発生が増加することも報告されています。先天性胆道拡張症や膵胆管合流異常症の方は胆道がんのリスクが非常に高いので予防的な手術が必要になります。

胆道がんの診断・症状

胆道がんの最初の症状としては多くの場合で腹痛と黄疸、白色便が見られます。黄疸とは白目の部分や皮膚が黄色くなる症状です。皮膚が黄色くなる前に尿がウーロン茶の様に濃い色になるので尿の色を確認することで黄疸に気づきやすくなります。しかし、症状はかならず出現するわけではなく血液検査での肝胆道系酵素(AST、ALT、ビリルビン、アルカリフォスファターゼ、γ-GTP)の上昇が診断の手がかりになる事があります。
胆道がんを疑った場合は図2のようにまず血液検査で腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)を測定し腹部超音波検査で胆管の形態を検査します。異常があればすぐにコンピューター断層撮影(CT)で検査を行います。通常CTは予約検査となり検査までに時間がかかるものですが、当院では放射線部の協力により胆道がんが強く疑われる場合は外来受診当日に緊急でCTを撮影することができます。CTは胆道全体を詳しく調べるのみでなく、もし胆道がんがあった場合には病変の広がりや転移を見ることもでき胆道がんの診断には必須の検査です。必要に応じて磁気共鳴胆道膵管造影(MRCP)を撮像する場合もあります。CTやMRCPでは判断しかねる時は超音波内視鏡(EUS)でより細かく胆管の検査を行います。EUSはCTでは分からない様な小さい病変も診断可能です。がんの診断のみではなく実際に胆道がんと分かった場合もがんの広がりを見ることができる非常に有用な検査です。

胆道がんの診断・症状
図2

胆道がんの治療

胆道がんの治療は外科手術と抗がん剤による化学療法に分かれます。胆道がんと診断がついたら内視鏡で治療可能かどうかを確認し、内視鏡治療が困難であれば手術の可能性を検討します。胆道がんの進行度が手術可能な段階であれば手術が最も治癒が期待できる治療方法です。手術可能な場合には外科と連携し可能な限り早いスケジュールで手術ができるように調整いたします。診断時に遠隔転移があるなどで手術不能と判断された場合には内科的に化学療法を行います。多くの場合、化学療法は週に1回外来通院で行う事になります。開始する際は、副作用などの不安もあると思われますので入院の上で医師・看護師・薬剤師で連携をとりながらサポートさせていただきます。
胆道がんはがんそのものの治療以外に胆汁の流れの治療が必要になります。胆汁の通り道である胆道に腫瘍ができるので胆汁の流れが悪くなり黄疸になります。これは化学療法の時だけではなく、手術を行う予定の方でも必要になることがあります。内視鏡を使用してステントを留置して胆汁の流れを確保する治療(ERCP)を行うことで治療可能ですがステントは時に胆石やがんの進行で閉塞することがあります。ステントが閉塞すると胆管炎になり腹痛や発熱、黄疸といった症状が出ます。ステント閉塞時は迅速な対応が必要であり当院では夜間や休日でもステント交換に対応できる体制が整っております。また、中にはERCPでのステント治療が困難なため皮膚から胆管を針で穿刺してドレーンバッグをぶら下げながらの生活が必要になる方もいらっしゃいます。当院ではそういった方に超音波内視鏡を使用して胃に胆汁の通り道を作る先進の処置(図3:超音波内視鏡ガイド下胆道ドレナージ術)を導入して患者様の負担を減らせるようにしております。

胆道がんの治療
図3

当院での胆道がん治療成績

2022年は47人の胆道がんの方が当院肝胆膵内科で入院され治療いたしました。診断・治療が難しい病気ではありますが外科と連携しながら治療成績を上げるため日々診療しております。
胆道がんについて疑問点や相談などありましたらいつでも外来にご相談下さい。