1. ホーム
  2. 診療科・部門の紹介
  3. 脳神経内科
  4. 脳神経内科:地域と連携した認知症診療への取り組み

地域と連携した認知症診療への取り組み

品川区の認知症医療・介護体制の中での役割

NTT東日本関東病院は、その名のとおりNTT東日本が設立運営する企業立病院ですが、同社の社会貢献のひとつとして一般にも広く門戸を開いています。594床(一般病棟554床、精神病棟50床)という規模に加えて、情報通信企業が運営する病院として、IT技術を積極的に活用するなど先端技術を取り入れた医療に取り組むことを理念としております。

認知症診療に関しては、品川区医師会、荏原医師会、昭和大学病院とともに、品川地区の認知症ネットワークを立ち上げました。

品川区では行政が先頭にたって認知症に対する様々な施策が進められています。2022年度中に開始が予定されている認知症の住民検診もそのひとつですが、当院はその一翼を担うべく、地域医師会と協力して、施策の立案段階からスムーズな実施のための計画づくりに参画してきました。このような活動が実践可能となっている背景には、当院が地区医師会の先生方と共に認知症に対する勉強会を定期的に企画し、地域の認知症診療の向上に努めてきたことや、多職種の方々との定期的な認知症勉強会を通じて相互の密なコミュニケーションが可能となったことが大きく役立っているものと思います。このような多職種にわたる関係があるからこそ、当院は認知症の患者さんを地域のクリニックや介護の現場に安心してご紹介することが可能となっております。

正しい認知症診断を可能とする検査手段の充実

認知症の正しい診断のためには、本人にお話を伺うとともに、本人を介護されているご家族などからもお話を伺うことが大切です。その上で種々の認知機能の検査を行いますが、当院には言語聴覚士や臨床心理士が在籍しており、医師の診療をサポートしてくれています。さらに、認知症の鑑別を行うための画像診断(脳CTやMRI、脳血流シンチグラフィー、DATスキャン、MIBGシンチグラフィーなど)も放射線科と連携して常時行っています。

認知機能の低下はアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症といったよく知られた病気で起こるだけではなく、様々な内科疾患や外科疾患でも見られることがあります。当院は総合病院として多くの科とそれぞれの科に関わる検査機器を兼ね備えているので、複数の科が共同して認知機能の低下の原因を突き止め治療にあたる場合もあります。それが当院の強みの一つでもあります。

認知症患者さんを支える院内・院外の多職種ネットワーク

当院では、地域のクリニックなどの先生からの紹介を受けて確定診断や初期治療を行ったあとは、その後の治療方針を含めて紹介元の先生に逆紹介を行い、治療の継続をお願いしています。近年は、独居や老々介護の認知症患者さんも増えているので、単に認知症の診断を行ったのみではその後の治療に結びつきません。認知症の在宅療養を支えるためには、介護保険の申請や介護を支える家族間の調整、利用できる社会資源の紹介など多くの要素があり、それらをサポートしているのが総合相談室であり、診断と治療方針が決まった患者さんの相談に対応しています。また、医療連携室は地域のクリニックなどの先生方とのパイプ役をつとめています。

総合相談室は地域の地域包括支援センター(在宅介護支援センター)や訪問看護ステーションなどとも強いネットワークを持っており、地域から報告される認知症患者さんの様々な問題にも対応しています。

認知症診療は地域を越えて

当科を受診されている認知症の患者さんは、品川区在住の方に限らず周辺の区や近隣県からも来られています。認知症診療は診断と投薬治療のみで完結するものではありません。家庭での生活環境の調整やデイサービス利用など、地域包括支援センター(在宅介護支援センター)との関わりが重要です。認知症への対応は地域によって特色があり、お住まいの地域で利用可能な施設や資源の情報はその地域の地域包括支援センターに集約されていると思いますので、なるべく早い段階でご相談された方がよいと思います。

認知症診療のハブとなる病院を目指して

脳神経内科では、認知症の在宅医療・介護を支えるために多職種が連携するためのICTツールの開発に加わり、その成果は“ひかりワンチームSP”(https://hikari.oneteamsp.com/)となって2016年にNTTテクノクロス株式会社からリリースされました(開発にはNTT東日本関東病院のアドバイスの元、NTT東日本とNTTテクノクロス株式会社との共同開発)。これは在宅療養をされている認知症患者さんの状況や、医療・介護上の問題点をひかりワンチームSPを実装したタブレット端末からクラウド上にあげて、その情報を患者さんに関わる医師・看護師・ケアマネジャー・介護担当者などが共有して、各職種が対応にあたるものです。NTT東日本関東病院内にいる専門の医師が、かかりつけ医を含む多職種からの相談に適宜応じることで、認知症に限らず、神経難病などかかりつけ医のみでは判断が難しい患者さんの在宅療養を支えることが可能となります。

「情報通信会社であるNTT東日本が運営する病院だからこそ、その特色を生かした“ひかりワンチームSP”の開発が可能となり、当院をハブとした地域医療への支援ができるようになりました。今後もNTT東日本の社会貢献の証として社会のデジタル化促進への試みに協力したいと思います。一方で、認知症患者さんへの対応には、その気持ちに寄り添うアナログ的感覚も極めて重要です。その姿勢を忘れずに、多職種の皆さんとともにチームでの医療・介護を展開していきます。