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高血圧・腎臓内科

(1)概要

高血圧・腎臓内科では、腎臓疾患一般と高血圧症の診断・治療を行っています。具体的な対象疾患は、急性腎障害、慢性腎臓病、体液・電解質バランスの異常、原発性糸球体疾患(急性・慢性糸球体腎炎症候群、ネフローゼ症候群)、全身性疾患による腎障害(糖尿病性腎症、膠原病、高血圧症など)、血液浄化療法全般(腎臓代替療法)、高血圧症(一次性、二次性)です。

腎臓疾患に関しては、画像検査や腎生検による診断と治療を行っています。
また、慢性腎不全(慢性腎臓病Grade3b以上)が進行した患者さんには、進行を抑えることを目標として、入院中の予定をスケジュール表のようにまとめた入院診療計画書(クリニカルパス)を用いた外来・入院教育を実施しています。

慢性腎不全(慢性腎臓病Grade3b以上)が進行して透析導入に至った場合には、当科の医師が血液浄化療法も担当し、患者さん一人ひとりの経過を一貫して、責任を持って診ております。

(2)ポリシー

慢性腎臓病(CKD)の病診連携

CKDと診断を受け、紹介で受診される患者さんの中には、腎機能が悪い、あるいは透析導入の危険性のみがあると考えておられる方もいらっしゃいますが、これはCKDの概念とは異なります。
CKDとは、腎障害を持つ人が心筋梗塞などの心・血管疾患を発症することが多い、という報告を機に提唱され始めた概念です。現在、日本では成人の8人に1人がCKD(※1)といわれています。

当科では近隣のクリニックの先生方と病診連携を行い、検診のみで経過を観察してよいCKDなのか、あるいは定期的な外来受診が必要なCKDなのかを見極め、適切な対応を選択しています。また、CKDの原因は何か、心筋梗塞や脳梗塞など心・血管疾患を発症するリスクはあるか、透析導入のリスクがあるかについても確認し、病診連携を緊密に取りながら患者さんを地域全体でみております。

慢性腎不全(慢性腎臓病Grade3b以上)教育

図1は、1991年~1994年に当院で透析導入となられた方の透析導入までの経過(血清クレアチニン値(Cr)の経過)を腎臓疾患別に示したものです(IgAN:IgA腎症、DM:糖尿病、HT:高血圧症、PCK:多発性のう胞腎)。この図から、原因となる腎臓疾患により透析導入までの経過は異なること、経過は原因となる腎臓疾患により異なるものの、どの病気もゆっくり進む時期、急に悪化する転換点、急に進む時期があることが分かります。

図1

【図1 疾患別 透析導入までの経過】

当院の各疾患の転換点のCrは、IgANでは2.17mg/dl、DMでは1.87mg/dl、HTでは2.59mg/dl、PCKでは3.09mg/dlでした(図2)。この転換点のCrに達するまでを引き延ばすことが、透析導入までの期間を長くできる方法と考えています。このために、当科では血圧の管理が極めて重要と考え、日々診療しています。

図2

【図2 4疾患の末期腎不全までの典型的なCr推移】

高血圧症診療

高血圧症の診断・治療に際しては、以下3点に気を付けて診療しています。

(1)本当に高血圧症かどうかを判断する。
当科では、家庭血圧測定の推進をしています。
(2)一次性高血圧症と、二次性高血圧症(原因のある高血圧)の鑑別診断を行う。
(3)高血圧による合併症(脳卒中、眼底出血、心臓肥大、心筋梗塞、蛋白尿、腎機能の低下など)の発症予防を行う。

血液浄化療法

当院に通院されている慢性腎不全(慢性腎臓病Grade3b以上)患者さんの腎機能低下が進み、血液透析や腹膜透析が必要になった場合の透析導入や、他院で血液浄化療法を受けている方が、手術や治療のために当院に入院する場合の、入院中の血液浄化療法を行っています。

また、ギランバレー症候群などの神経疾患や、炎症性腸疾患などの消化器疾患、敗血症に対して、血液吸着療法、血漿交換療法なども行っています。ほかにも、急性腎障害に対する急性血液浄化療法、各科で発症した多臓器不全に対する持続血液浄化療法なども行っています。

(3)特徴

当科は、予防医学、がん診療、救急医療のすべてに関わっています。

予防医学

高血圧症は、自己管理が重要です。高血圧症の予防・治療のひとつとして、当科では生活習慣の改善と、家庭血圧測定を推奨しています(図3)。

生活習慣の改善

  • 体重管理:BMI25未満
  • 減塩:1日あたり6gまで
  • 野菜の摂取(腎不全の方を除く)
  • 節酒:男性の方は日本酒1合かビール500ml、もしくはワイン2杯まで。女性の方はこの半量。
  • 禁煙

生活習慣の改善

【図3 生活習慣の改善】

家庭血圧測定の推奨

上腕型血圧計で朝と寝る前に1日2度測定する家庭血圧測定(図4)により、病院に来ると血圧が高くなり、家では正常値を示す白衣高血圧や、病院での血圧は良好で、家では高くなる仮面高血圧などが明らかになりました。このことから、家庭血圧測定が高血圧症の治療において重要といわれています。
当科では、かねてより家庭での血圧測定値と外来での血圧測定値から、高血圧症の治療を行っています。

家庭血圧の測り方

【図4 家庭血圧の測り方】

がん診療(各診療科のサポート)

日本では、生涯でがんに罹患する確率が2人に1人(※2)となっており、CKDと指摘される率も成人で8人に1人(※1)と高値を示しています。そのため、腎障害のある患者さんが、がん治療を受ける機会も多くなっています。また、がん治療も多様化し、治療に伴う腎障害も多く見受けられるようになりました。
2011年には、腎障害のあるがん患者さんによりよいケアを提供するため、オンコネフロロジーという概念も生まれました。当科でも各診療科の腎障害のあるがん患者さんがよいケアを受けられるよう、腎臓内科の観点からがん診療に協力しています。

救急医療

重症感染症や重篤な状態で救急入院される患者さんは、腎臓を含めた多臓器に障害を受けているため、集中治療室での持続的な血液浄化療法が必要になることが多々あります。当科は、持続的血液浄化療法を行うことで、救急医療にも貢献しています。

引用元
※1 エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023 (一般社団法人日本腎臓学会)
※2 最新がん統計2022(国立がん研究センター)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

部長 渋谷 祐子

関連リンク:血液浄化センター