感染対策推進室


(1)概要

病院という場所は、具合の悪い方、抵抗力が落ちている方が集まる場所であり、すでに感染症を発病されて来院される方も少なくありません。いってみれば、病院は感染症も、感染症にかかりやすい人も、集まるところだということです。このような状況では病院の中で外因性、内因性いずれの感染症も発生しやすくなり、特に外因性感染症の院内での発生防止が重要になります。このため、多くの病院で、院内において感染症を蔓延させないことを目的に、感染対策専門の部署が設置されています。当院でも感染対策推進室(医師2名、感染管理認定看護師1名、看護師1名、医師業務補助者1名、事務2名)が設置され日々の業務に当たっています。

◆手洗いが何より大事!

 感染症の伝播防止の方法には様々なものがあり、そのすべてが重要ですが、その中でもとりわけ重要なのは手指衛生、すなわち「手洗い」です。通常の流水と石鹸による手洗いだけではなく、手指消毒剤を用いた手指衛生が病原体の伝播を遮断するために最も効果があります。すべての職員に対して適切なタイミングでの実施と習慣化を求めており、その実施状況も日々チェックを行っています。

◆マスクや手袋、エプロンは正しく使う

 次に重要なことはマスクや手袋、エプロンなど(個人防護具と呼びます)を正しく使うことです。私たちはこれもすべての職員に対して、必要な時に適切に使用できるように指導を行っています。

◆清潔である場所の清潔を維持する

 このほかに、清潔であるべき場所がつねに清潔を維持できているか、滅菌(病原体が一つもいない状態)であるべき物が常にそうなっているか、点滴などが不潔に扱われていないか、清掃が行き届いているか、など枚挙にいとまがない程の細かい点について日常的にチェックを行い、改善が必要な場合は指導を行っています。

◆感染症発生の監視も重要

 院内でどのような感染症がどの程度発生しているのかの監視も重要な業務の一つです。インフルエンザ・COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の発生状況は最も注目するものとなります。複雑化する医療器具により起こりやすくなる感染症についても発生数の把握に努め、器具の使用に問題がないかも調べて改善を指導するようにしています。

(2)ポリシー

 私たちは病院内のすべての場所を対象に、①感染症の伝播防止、②感染症の発症状況の監視、③感染症の原因となる病原体の検出状況の監視、を中心に活動し感染対策に努めています。

特徴

◆薬剤耐性(AMR)対策

 今世界規模で問題になっている薬剤耐性菌対策にも力をいれています。微生物検査室と密に連携し、耐性菌が確認された場合はその耐性菌が院内で蔓延しないように対策を講じます。他の患者さんと接触がないように個室に入院していただいたり、耐性菌が拡がっていないかの確認で他の入院患者さんにスクリーニング培養検査を行うこともあります。また薬剤耐性(AMR)アクションプラン(厚生労働省)に基づき、薬剤耐性菌を作らないために、抗生物質(抗菌薬)を適切に使用してもらうよう、各診療科の先生方に働きかけを行っています。

◆多くの業務を担当しています

 伝染性の強い感染症で入院された患者さんがおられる場合には、必要な感染防護策(経路別予防策と呼びます)が実施されているかの確認にも行きます。このほか、院内の工事に対して患者さんを守るために必要な感染対策の指導を行ったり、その現場を直接確認しに行くこともしています。
感染対策推進室メンバーに、薬剤師、微生物検査技師、看護師などを加えた感染対策チーム(ICT)を構成しており、院内の定期的な巡視・確認を行っています。また毎日ミーティングを開いて院内で問題になっている部署がないか、耐性菌の発生状況に不自然な点はないか、などを議論してスタッフに共有しています。
安全で安心できる病院の運営には欠かせない重責を担う部署であることを自覚して、毎日の勤務に当たっています。

■みなさんにお願いしたいこと

 病原体は残念なことに目に見えません。自分から病原体ですと名乗ってくれることもありません。従ってつい、対策をおろそかにしてしまいがちです。一番大事なことは手を清潔にすることだと言われています。皆さんも小さいころ、帰宅した時やトイレの後、食事の前に「手を良く洗いなさい」と指導されたのではないかと思います。大人になってからも同じです。手をきちんと洗って清潔にするだけで、感染症の危険は少なくなるとされています。トイレの後に手を洗わない大人の人、指先しか洗わない大人の人をあちこちで見かけますが、これではいけません。しっかり手を洗って、感染症の懸念を振り払い、元気な毎日を目指しましょう。