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宗教の教義により輸血を拒否する患者への対応

NTT東日本関東病院ガイドライン

表題の案件について当院では、1990年9月5日、1999年7月27日に倫理・医療監査委員会から指針が示されている。その後、日本における関連5学会の合同委員会(日本輸血・細胞治療学会、日本外科学会、日本小児科学会、日本麻酔科学会、日本産婦人科学会)が、患者の権利やインフォームド・コンセントに関する検討を踏まえたうえで、2008年2月28日に「宗教的輸血拒否に関するガイドライン」を示した。当院においてもこのガイドラインを踏まえて、「宗教の教義により輸血を拒否する患者への対応」を新たに定める事とした。

Ⅰ.宗教的輸血拒否に関する当院の基本指針

  1. 宗教的理由により輸血拒否の意思を患者が示した場合、人格権の尊重という観点からその意思を尊重して一般的な診療・処置には応じるが、救命手段として輸血が必須であると判断される緊急事態では輸血を行う(相対的無輸血)。
  2. いかなる状況でも輸血を行わない医療(絶対的無輸血)を患者があくまで求める場合、無血での処置や手術を承諾する契約を結んではならない。絶対的無輸血を前提とした免責証書を提出する申し出が患者や家族からあったとしても、これを受け取ってはならない。

Ⅱ.宗教的輸血拒否患者に対する診療方針

  1. 当該患者の担当医になった場合には、院長・担当診療科部長へ速やかに報告・相談する。
  2. 宗教的輸血拒否患者に対する診療方針について、担当医は当該患者に本ガイドラインを示して説明を行う。
  3. 患者や家族への説明内容や診療状況は、遅滞なく診療録に記載する。

18歳以上の患者

一般的な処置・手術など時間的余裕のある平時の診療の場合には、当院の基本指針である相対的無輸血の方針を患者に説明し、患者に意思決定する機会を与える。相対的無輸血に同意した場合には、輸血同意書を取得する。一方、いかなる状況でも輸血を行わない絶対的無輸血を希望する場合は、当院では倫理的に受け入れられない旨を説明する。
緊急処置として輸血が必要な患者が来院した場合や入院中の病状急変により緊急に輸血が必要な場合など、患者が意思決定や転院を図る時間的余裕がない場合には、時間の許す限り患者や家族に輸血の必要性を説明し同意を得るために最大限の努力をするが、同意が得られない場合には救命を優先した相対的無輸血を適応し、輸血を行う。

18歳未満―15歳以上の患者

本人・親権者の両者が輸血を拒否する場合は、18歳以上に準ずる。
本人が輸血を希望するが親権者が拒否する場合は、本人が輸血同意書を提出する。
本人が輸血を拒否するが親権者が希望する場合は、本人の意向を尊重するが、ほかに救命手段がない事態に至った場合は、親権者が輸血同意書を提出する。

15歳未満の患者

親権者の双方(父母)がいずれも輸血を拒否する場合は、18歳以上に準ずる。治療行為が阻害される状況が発生した場合は、児童相談所に通告し、児童相談所が家庭裁判所に親権喪失を申し立て、仮処分により決定された親権代行者からの同意により輸血を行う。このような時間的余裕がない場合は、「自己決定能力が未熟な15歳未満への輸血拒否は親権の乱用に当たる」として救命を優先した相対的無輸血を適応し、輸血を行う。
親権者の一方が同意し他方が拒否する場合は、双方の同意を得るように努力するが、ほかに救命手段がない緊急事態に至った場合は、輸血に同意する親権者が輸血同意書を提出する。

Ⅲ.その他

病院は宗教的輸血拒否患者に対する診療方針について、ホームページで情報提供を行うこととする。

制定責任者職名:倫理・医療監査委員会委員長
承認責任者職名:品質保証委員長
第1版制定日:1999年7月27日
最終改訂日:2015年7月14日
最終確認日:2022年1月25日