前立腺センター

概要

前立腺疾患全般を扱いますが、主たるものは、前立腺肥大症と前立腺がんの2つが対象となります。

前立腺肥大症

  • 診断・検査
    自覚症状の調査票(IPSSやQOL)で重症度の判定を行います。客観的には、尿流計で尿の勢いや排尿にかかる時間を測定します。また超音波検査などで前立腺の大きさや残尿量のチェックをします。血液検査ではPSA(前立腺特異抗原)の上昇が無いことを確認し、前立腺がんの合併の可能性を除外します。
  • 内科的治療
    前立腺部尿道の緊張をとる薬、前立腺そのものをやや縮小させる薬などがあります。
  • 手術による治療
    内科的治療が有効でない場合に行われます。最近では、開創手術すなわち下腹部を切開して前立腺組織を除去する方法は殆ど行われなくなりました。尿道から内視鏡を入れて治療する、経尿道的な内視鏡治療が主体となっています。従来のTUR-Pといわれる方法は、切除するのに使用する熱源が電気メスと同様のものを使用します。
    私達が最近主に行っているのはレーザーを使用した切除の方法(HoLEPと言います)です。この方法ですと、手術に伴う出血は少なく輸血が不要となりました。その他の合併症も少なく、術後に尿道に留置するカテーテルの留置期間も短縮されました。したがって、従来法のTUR-Pとは違って短期間の入院で済むといった、身体に負担の少ない手術法といえます。

前立腺がん

  • 診断・検査
    血液検査ではPSA(前立腺特異抗原)値を確認します。進行がんでは、触診でもがんの存在がわかりますが、早期癌では触診での判定は困難です。
    PSAの上昇は、がん以外に前立腺肥大症や炎症でも見られます。画像の検査として、MRIは有効な手段です。がんの有無の確定は、実際に針を刺して前立腺の組織検査をして判定されます(前立腺針生検)。がんと診断された場合には、CT検査や骨シンチなどの検査をして転移の有無を調べます。
  • 内科的治療
    主に80歳以上の高齢者や、進行がんの方が対象となります。前立腺がんは男性ホルモンの影響下で増殖しますので、それを遮断する薬を注射や内服薬で治療します。
  • 手術による治療
    転移のない前立腺に限局したがんが治療対象になります。当科では、2015年に当時の世界最新機種であったダヴィンチXiが導入されロボット支援手術が開始されました。開腹手術に比べて出血量が少なく、勃起機能の温存や術後尿失禁の発生率の減少など機能温存にも優れた手術です。2021年には153例施行され、多数の手術数を誇ります。さらに2021年より術後早期回復プログラム(ERAS)を導入し、手術後3時間で離床(ベッドから離れ歩行すること)し、手術当日から食事を摂っていただいています。
  • 放射線治療
    手術治療と同じく、転移のない前立腺に限局したがんが治療対象になります。当院では2016年5月からIMRTが保険診療となりました。

前立腺センターを受診される方へ

当科・当センターでは、チーム医療を実践しており、安心して手術や治療を受けていただけるような体制づくりに力を入れています。がんの手術を希望される場合、前医の紹介元の先生の紹介状を持参し、可能であれば直近の画像診断資料や病理診断資料も併せてお持ちください。
また、お薬手帳をお持ちの方は持参してください。血液をさらさらにする薬など、服用されている薬によっては、手術の際に出血の可能性があるからです。当科・当センターでは、薬剤師が介入し、手術の前に服用している薬を確認していますが、その際にもお薬手帳があるとスムーズに治療を進めることができるでしょう。

センター長 中村 真樹