産婦人科

(1)概要

  • 産婦人科診療は、生命の誕生である分娩をはじめ、子宮筋腫や卵巣嚢腫などの良性疾患から子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんなどの悪性疾患まで多岐にわたります。
  • 2023年1月には、患者さんもスタッフもすべて女性である「レディース病棟」が完成しました。婦人科患者さんはこの病棟をご利用いただくことになりますので、プライバシーに十分配慮しながら、入院中・手術後の女性ならではのデリケートな問題に対応させていただきます。
  • 将来の妊娠に備えて若いうちの卵巣組織を冷凍保存する卵巣組織凍結も、専門機関と協力することで安全に手術を行っています。

参考:日本産科婦人科学会HP 「婦人科の病気」
https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=17

【安全な手術をめざして:子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん】

婦人科領域の主ながんの診断、手術、抗がん剤、放射線治療などを総合的に行っています。
日本婦人科腫瘍学会認定 婦人科腫瘍専門医が手術を担当し、安全で安心な手術を心がけています。

【低侵襲手術:子宮筋腫、子宮腺筋症】

子宮筋腫、子宮腺筋症などの良性の疾患に対しては、傷が小さく、その結果として痛みが少なく入院期間も短く、社会復帰も早くできるように低侵襲手術をお勧めしています。

【将来のための手術:卵巣組織凍結】

卵巣組織凍結とは、将来の妊娠に備えて、正常卵巣を摘出し、的確な処理を行った後に凍結保存をしておく処置です。放射線治療や抗がん剤投与を受けるがん患者さんが、治療の影響が卵巣組織に及ぶ前に行う「医学的適応」と、将来の妊娠に備えて生殖能力が高いうちに卵巣組織を凍結させる「社会的適応」があります。いずれも異常がないと思われる卵巣組織を摘出する点、自費の手術である点は同様であり、行う手術手技も同じです。

(2)ポリシー

婦人科「低侵襲の婦人科手術」

子宮がん・卵巣がんといった婦人科がんの診断・治療は、日本婦人科腫瘍学会認定 婦人科腫瘍専門医を含む、婦人科がんを専門とするチームでの診療を行っています。
特に腹腔鏡手術を積極的に取り入れており、患者さんの痛みを少なくし入院期間も短くなるのはもちろん、安全性に配慮した手術を行っています。
また、医師・薬剤師チームによる抗がん剤の適正使用や副作用対策なども重要であると考え、医師・看護師の他に薬剤師からも抗がん剤を含む薬剤の指導を行っています。
緩和ケアを専門とする医師による疼痛コントロール、放射線科専門医による放射線治療など、チーム医療を行っています。
当院は「地域がん診療連携拠点病院」の指定を受けており、その相談窓口として「がん相談支援センター」を設置しております。治療のことはもちろん、仕事や経済的なことをご相談いただくことが可能です。

産科「安全かつ快適な妊娠・分娩を目指して」

2007年より助産外来を開設し10年以上診療を行ってきましたが、オンライン両親学級やオンライン産後指導などを取り入れて在宅のまま受講できるなど、全看護スタッフが助産師であることを生かした、妊娠中、出産後もお母さんに優しいお産を行っています。
「出産希望の方」として、別に専用ページをご用意しています。

(3)特徴

小さな傷で痛みを少なくする手術と、正確な診断に基づく安全な手術

      

  • 子宮がん・卵巣がんといった婦人科がんについては、まず診断を正確に行うことが大切です。がん検診で異常がみつかった医療機関から紹介していただき、超音波検査やコルポスコープなどで精密検査を行い、採血検査のほか、CT・MRIなどの画像診断も合わせて行いながら的確な診断を行います。
  • 良性の子宮筋腫や卵巣嚢腫も含めて、手術をしたい人はいないでしょうから、痛みや貧血などの症状から解放されるための方法として手術を決断される方には、なるべく痛くなく、入院期間が短くなるような方法を提示いたします。
  • 集中治療室や輸血の確保が整っており、夜間の検査なども行うことができ、必要があれば外科や泌尿器科の先生に相談ができる総合病院ならではの体制が整備されています。
  • 他科領域でがん治療を行う方に対して、あるいは現在は仕事で忙しいものの将来の妊娠に備えたいという方に対しては、腹腔鏡手術で正常卵巣を摘出し、卵巣組織凍結温存しておき、将来これを解凍して腹腔内に戻す治療も行っています。

【安全な手術をめざして:子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん】

(1)ポリシー

子宮頸がん:

市区町村のがん検診で異常を指摘されてご紹介いただく方がほとんどです。コルポスコープという拡大して見る医療機器を使用して、組織を採取する精密検査により、正確な診断を行います。その結果により、経過観察で良い方、子宮の一部を焼いたり切除したりしたほうが良い方、そして子宮を摘出する必要がある方の診断を行い、ご希望もうかがいながらその後の方針を決めていきます。これから出産を控えている方には、経過をみる方法も含め、なるべく身体の負担の少ない治療をお勧めします。

子宮体がん:

通常のがん検診で行われることはあまりなく、不正出血などに対する検査を行って発見されることが多いです。
がんが発見された場合、治療の主体は開腹手術による子宮摘出をはじめとする手術です。

卵巣がん:

子宮の疾患と異なり、がん検診ができないため、急速に大きくなっている場合や受診された際にはすでに大きくなっている腫瘍、あるいは超音波検査で悪性腫瘍を疑わせる腫瘍の場合、精密検査+治療目的としての手術のためにご紹介をいただいています。産婦人科の先生はもちろん、お腹が出てきていたが太ったと思っていた、あるいは急な腹痛で内科の先生に診てもらったら卵巣が大きかったとご紹介いただくこともあります。超音波、採血検査のほか、CT・MRIなどの画像診断も合わせて行って診断を進めますが、最終的には手術による診断が必要です。
月経痛や不妊の原因として知られている子宮内膜症という病気が卵巣に発症すると卵巣嚢腫(チョコレート嚢胞)になります。手術を行うと3.4%に卵巣癌がみつかるという報告があり、急速に大きくなる場合、10cm以上の場合は特に注意が必要ですが、MRIなどの検査では発見できないことも多く、心配な場合は手術を積極的にお勧めしています。

参考:日本婦人科腫瘍学会HP 「子宮内膜症(卵巣がんとの関係について)」
https://jsgo.or.jp/public/naimaku.html

(2)特徴

子宮頸がんの前がん病変である子宮頸部異形成に対しては、将来妊娠する可能性のある方には低侵襲手術としての円錐切除術などを考慮し、子宮筋腫などの疾患もある方の場合は内視鏡手術も選択肢となります。
子宮体がんに対しては、手術後に必要があれば化学療法、放射線治療を併用した治療を行います。
卵巣腫瘍は手術を行わないとがんかどうかの診断を行うことができません。妊娠の可能性を残すことを強く希望された方には、まずは診断のための手術を行い、その最終病理診断を待って、なるべく子宮・卵巣を温存する方向でその後の治療方針を決定します。

(3)受診される方へ

精密検査が必要、と言われた場合、とても悩まれると思いますが、まずは精密検査をうけましょう。
がん専門医が診察することで診断できる場合もありますし、手術しないとわからないこともあります。
妊娠のこと、お子さんやパートナーのこと、仕事のことなど、悩みはあると思います。
がん専門の看護師やがん相談室では仕事や経済的な問題についても相談に乗りますので、何でもご相談ください。
糖尿病や心臓疾患をお持ちの方は、専門医のいる当院で一緒に最善の治療法を考えていきましょう。

【低侵襲手術:子宮筋腫、子宮腺筋症】

(1)ポリシー

子宮の疾患では最も多い子宮筋腫ですが、女性ホルモンが分泌される年齢の方の20〜30%に認められると言われています。子宮筋腫の発生する場所や個数により症状が異なるため、症状に合った治療法をお勧めします。

(2)特徴

手術としては2通りあり、1つは月経時の症状を軽くしたり、妊娠しやすくしたりするための子宮温存手術である手術子宮筋腫核出術、子宮鏡下子宮筋腫核出術です。もう1つは今後の妊娠の希望はなくむしろ再発による再度の手術を避けたいというお気持ちが強い方が決断される子宮を全て摘出する子宮全摘術ですが、その方法としては、開腹手術、腟式手術などがあり、子宮の大きさや過去の分娩や手術などに基づいて適した術式をお勧めしています。
妊娠希望はないものの、どうしても子宮を温存したいという方には子宮動脈塞栓術(UAE)も行っています。

(3)受診される方へ

今まで手術せずに様子をみていたけれども日常生活に支障がでてきた、ホルモン治療を行っても症状が良くならない、不妊治療のため受診したらまずは手術を勧められたなどの理由で手術目的にご紹介をいただく方がほとんどです。でも「手術は勧められたけど、手術したくない・子宮は取りたくない」というのが本音ではないでしょうか。子宮筋腫・子宮腺筋症があっても無症状あるいは症状が軽い場合はそのまま経過を見る方法もあります。しかし、月経量が増えたり、月経痛がひどくなったりするなどの症状がある場合や、不妊症の原因と診断された場合は手術をお勧めしますが、最終的には患者さん本人のご希望を最優先します。

  • 粘膜下筋腫であれば、2泊3日で治療可能な子宮鏡手術をお勧めします。
  • 子宮は大きくないけれど、子宮がん検診も引っかかっている方には、腟式手術が良いと思います。
  • 手術をしたくない方、どうしても子宮は残したい方には、子宮動脈塞栓術(UAE)という方法もあります。

【将来のための手術:卵巣組織凍結】

(1)ポリシー

  • 卵巣組織凍結には、放射線治療や抗がん剤投与を受けるがん患者さんが、治療の影響が卵巣組織に及ぶ前に行う「医学的適応」と、将来の妊娠に備えて生殖能力が高いうちに卵巣組織を凍結させる「社会的適応」があります。いずれも異常がないと思われる卵巣組織を摘出する点、自費の手術である点は同様であり、行う手術手技も同じです。
  • 卵巣組織を凍結保存しておき、しかるべき時期が来たらこれを解凍して移植する方法で妊娠・出産された方は世界的に200例以上が報告されており、国内でも2022年に入って3例の出産例が報告されています。
  • 東京都では生殖機能に影響するおそれのある治療を受けるがん患者さんに対して、生殖機能温存治療および妊娠のための治療に係る費用を助成していましたが、2023年度より「少子化対策の一環で、未婚の女性が将来の妊娠・出産の可能性を残せるよう後押しする」という理由から、来年度から健康な女性の卵子凍結にかかる費用を1人あたり30万円程度助成(年間200人の利用を想定)することとなりました。

(2)特徴

  • 卵巣組織凍結保存を目的として設立された、過去の経験と実績の豊富な日本卵巣組織凍結保存センターと連携して、卵巣組織凍結・解凍移植を行っております。つまり、手術環境を整備された当院では安全に正常卵巣を摘出する手術を行い、運搬時間は15分程度である日本卵巣組織凍結保存センターに運んで、清潔に安全に卵巣組織凍結保存を行ってもらいます。

(3)受診される方へ

  • 放射線治療や抗がん剤投与を受けるがん患者さんが、治療の影響が卵巣組織に及ぶ前に行う「医学的適応」の患者さんの場合は、緊急性が高い場合があります。主治医の先生から当院の医療連携室(03-3448-6192)にお電話でご相談いただくことをお勧めします。
  • 将来の妊娠に備えて生殖能力が高いうちに卵巣組織を凍結させる「社会的適応」の方の場合は、手術の時期や方法などを十分にご相談する時間がありますので、初診予約をお取りください。