もやもや病について
もやもや病とは?
もやもや病は、1969年に日本の脳神経外科医である鈴木二郎医師と高久晃医師によって報告されました。脳血管造影検査でみられる、細い異常血管の網目状の像が、まるで「煙がもやもやと立ちのぼる」ように見えたことから、日本語の擬態語である「もやもや」を用いて命名されました。

その後、この名称は国際的にもそのまま “Moyamoya disease” として使用されるようになり、日本発の疾患概念として世界に広く知られるようになりました。
脳の中の内頸動脈の終末部や前・中大脳動脈が狭くなり、血流が低下します。その結果、脳は不足した血流を補おうとして、側副血行路として脆弱な細い、“もやもや血管”が形成されます。この血管が脳梗塞や脳出血の原因となります。

脳梗塞や脳出血を発症してしまうと、手足が動きにくい、言葉がわからないといった後遺症がのこることもありますし、時には生命にかかわることもでてきます。脳梗塞や脳出血の予防のためには、しっかりと診断をして適切な治療を行っていく必要があります。手術や内服治療を行うこともありますし、病状が落ち着いている時には定期健診の通院のみということもあります。子供や若い年代での発症が多い病気ですが、健康な人々とかわらない日常生活を送ることも可能です。
現在のところ、明確な原因は完全には解明されていません。
- 遺伝的要因が関与すると考えられています。RNF213(アールエヌエフ213)遺伝子という遺伝子が深く関係していることが分かっています。
- 家族内発症がみられることがあります。もやもや病の患者さんの約10〜20%に家族内発症がみられます。
- 動脈硬化や炎症などが原因ではない、原因不明の脳血管疾患です。
「遺伝子がある=必ず発症」ではありません
重要なポイントとして、
- RNF213遺伝子の変異をもっていても、多くの方は一生発症しません。
- 発症には、遺伝的素因に加えて、環境要因や体質などが関係すると考えられています。
どのくらい多い病気?
- 有病率:約6-10人/10万人(日本)
→比較的まれな病気ですが、日本では世界的にみて患者さんが多い疾患です。
もやもや病はどのような形で発症する?
- 一過性脳虚血発作(TIA)
- 脳出血
- 脳梗塞
- 頭痛・けいれんなど
患者さん個々のリスクは年齢、症状、血流状態などにより異なります。
難病センターHP
https://www.nanbyou.or.jp/entry/47
主な症状
年齢によって症状の現れ方が異なります。
小児に多い症状
- 一過性脳虚血発作(手足の力が一時的に入りにくくなる)
- けいれん
- 頭痛
- 学習障害や集中力の低下
- ※運動や泣いた後、過呼吸のあとに症状が出やすいのが特徴です。
成人に多い症状
- 脳梗塞による麻痺や言語障害
- 脳出血(突然の激しい頭痛、意識障害)
- 頭痛、めまい
当院の研究結果によると、成人のもやもや病では、明らかな脳梗塞などの脳実質障害がみられない場合でも、軽度の認知機能低下が生じることがあります。近年の研究により、その背景には前頭葉の血流低下(血行動態不全)が関与している可能性が示されています。特に前頭葉に脳内盗血現象を認める患者さんでは、実行機能や作動記憶といった前頭葉機能の低下が確認されました。さらに、前大脳動脈(ACA)領域の血流不全に対して浅側頭動脈―ACA直接バイパス術を行ったところ、前頭葉の血流改善とともに認知機能の有意な向上が認められました。これらの結果から、成人もやもや病の治療においては、脳卒中予防だけでなく、認知機能の改善・維持という観点も重要であることが示唆されています。
当科から発表したもやもや病に関する論文
- Tsunoda S, Inoue T, Ohwaki K, Takeuchi N, Shinkai T, Fukuda A, Segawa M, Kawashima M, Akabane A, Miyawaki S, Saito N. Influence of an improvement in frontal lobe hemodynamics on neurocognitive function in adult patients with moyamoya disease. Neurosurg Rev. 2024 Aug 2;47(1):395. doi: 10.1007/s10143-024-02639-y. PMID: 39093494.
- Tsunoda S, Inoue T, Ohwaki K, Takeuchi N, Shinkai T, Fukuda A, Segawa M, Kawashima M, Akabane A, Miyawaki S, Saito N. Association Between Frontal Lobe Hemodynamics and Neurocognitive Dysfunction in Adults With Moyamoya Disease: Retrospective Cohort Analysis. Neurosurgery. 2023 Mar 1;92(3):547-556. doi: 10.1227/neu.0000000000002246. Epub 2022 Nov 24. PMID: 36700728.
検査・診断
以下の検査を組み合わせて診断します。
- MRI・MRA:脳梗塞の有無、血管の狭窄を確認

術前MRA

術後MRA
- 脳血管造影検査:もやもや血管の詳細な評価

術前

術後
- 脳血流検査:脳への血流量や予備能力を評価

術前IMP-SPECT

術後IMP-SPECT
治療方法
症状や年齢、脳血流の状態に応じて治療方針を決定します。
薬物療法のみで病気の進行を止めることはできませんので、脳梗塞や脳出血のリスクを低減するために外科的治療を行います。
脳への血流を改善するための血行再建術(脳血管バイパス手術)と呼ばれる手術です。手術には頭皮の血管を脳の血管に直接つなぐ直接バイパスと血管を脳表に接触させ、新しい血管の発達を促す間接バイパスがあり、患者さんの状態に合わせてこれらの術式を使用して最善の治療を行います。術後の急性期には、手術そのものが成功しても一時的な神経症状が現れることもあります。もともと脳血流が不足している患者さんにバイパス術を行うため、脳血流の低下に伴う脳梗塞や、逆に過灌流による脳出血が起こる可能性があります。こうした合併症を避けるため、チームでMRIや脳血流評価を適宜行いながら慎重に経過を観察します。入院期間の目安はおおよそ2週間程度です。



上図は直接バイパス手術の一例を模式化したものであり、患者さん個々の状態や病態に合わせて術式を変更いたします。
当科から発表したもやもや病に関する論文
- Tsunoda S, Inoue T, Segawa M, Kawashima M, Akabane A, Saito N. Superficial temporal artery lengthening technique to prevent postoperative wound complications in direct revascularization to the anterior cerebral artery for Moyamoya disease. Acta Neurochir (Wien). 2022 Jul;164(7):1845-1854. doi: 10.1007/s00701-022-05180-3. Epub 2022 Mar 18. PMID: 35304649.
当科部長の井上智弘は、脳血管バイパス術をはじめとする脳血管外科治療に長年携わり、顕微鏡下手術の技術向上に継続的に取り組んできました。
脳血管バイパス術では、極めて細い血管同士をつなぐ精密な操作が求められるため、日常診療に加えて基礎的な縫合手技の訓練を重ね、手術技術の研鑽を行っています。
また、国内外の医療機関との学術的な交流や手術経験を通じて、もやもや病を含む脳血管疾患の治療経験を積んできました。
当院の脳神経外科では、複数の医師がチームとして連携し、患者さん一人ひとりの病状や血流状態を踏まえた治療方針を検討し、安全性に配慮した診療を行っています。
関連記事:小児もやもや病バイパス手術記
入院と術後経過
- 入院期間:通常1〜2週間程度
- 手術時間:3〜6時間程度
- 術直後は集中治療室(ICU)で管理
術後はリハビリテーションを含め、段階的に回復を目指します。
当院での診療体制
当院では、リハビリテーション科と連携し、おひとりおひとりの患者さんに合わせた個別性を重視したリハビリテーション治療を行っています。セラピストは手術前から介入し、手術後も評価を行い、高次脳機能障害などのもやもや病に特有の症状に対する訓練を、患者さんのニーズに合わせて行っています。
当院リハビリテーション科から発表したもやもや病に関する論文
- Naoko Takeuchi, Noriko Haruhara, Takako Shinkai, Sho Tsunoda, Akira Fukuda, Cognitive and Quality of Life Improvements Following Bypass Surgery in Adults with Moyamoya Disease:The Role of Rehabilitation Therapists, Higher Brain Function Research, 2025, Volume 45, Issue 3, Pages 128-139, Released on J-STAGE July 31, 2025, Online ISSN 1880-6554, Print ISSN 1348-4818,
https://doi.org/10.2496/hbfr.45.128, https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/45/3/45_45.128/_article/-char/en
難病医療費助成制度について(指定難病)
もやもや病は、国が定める指定難病のひとつです。条件を満たす場合、医療費の自己負担が軽減される制度(難病医療費助成制度)を利用することができます。
当院でのサポート
- 当院は指定難病指定医療機関です。
- 主治医が診断書作成を行います。
- 医療ソーシャルワーカーと連携し、申請手続きや制度利用についてのご相談にも対応しています。
ご不安な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。








