緩和ケア科 後期研修プログラム
対象
緩和ケアの専門医を目指す医師(緩和ケアの専門医:緩和ケア病棟、緩和ケアチーム、在宅緩和ケアに専従する医師)
緩和ケアを専門としないが、緩和ケアの研修を希望する医師
資格:
医師免許取得者で、一般診療科の学会専門医・指導医・標榜医を取得していること。
2年間の初期臨床研修を修了した、3年次以降の医師
研修:
厚生労働省基準の「がん診療にたずさわる医師に対する緩和ケア研修会」を修了していることが望ましい。
経験:
緩和ケアの経験は不問であるが、研修期間あるいはその後の医師業務において、苦痛を訴えるがん患者の診療経験があり(医療用麻薬の処方経験を含む)、かつがんによる死亡に対して、死亡診断書を発行した経験をもつ者。また、患者・家族との良好なコミュニケーション能力をもち、チーム医療に貢献できる協調性のある者。
一般研修目標(GIO)
悪性腫瘍終末期における種々の身体症状・精神症状・スピリチュアルペイン・社会的苦痛をもつ患者を診察し、諸症状を理論的に診断したうえ、全人的立場からQOLを維持するための医学技術・処置およびコミュニケーションスキルを習得する。また医療者として家族への配慮の必要性を認識する。
具体的研修目標(SBOs)
- 現代の医学では治癒が困難である事実とその根拠を正確に理解し、患者・家族、スタッフに説明することができる。
- 患者、家族の苦痛およびそれに対する感情をくみとり、診療録に分析的な記録をすることができる。
- 問診・理学的所見を中心に、侵襲度の低い検査を補助的手段として、がんに伴う諸症状の病因を把握・理解し、診療録に記載し、患者・家族にわかりやすい言葉で説明ができる。
- 集学的医療チーム(interdisciplinary team)の一員として、緩和ケアにかかわるさまざまな職種のスタッフと良好なコミュニケーションが保てる。
- 患者・家族との会話を重視し、相手の感情に配慮しながら、共感的応答、開かれた質問、真実の伝達、教育的かつ治療的コミュニケーションを行える。
- がん疼痛を評価し、非薬物的治療の有効性と限界を把握するとともに、薬剤治療の必要性を判断することができる。
- 医療用麻薬の取り扱いに関する基礎的知識を習得する。
- がん疼痛に対するオピオイドを含めた各種鎮痛薬の作用・副作用を理解し、患者・家族にわかりやすく説明することができる。
- 症状緩和やケアに対して、インフォームドコンセントを得る。
- QOLを向上・維持させるための侵襲的医療処置(中心静脈カテーテル挿入、胸腔穿刺、腹腔穿刺など)の適応を判断する能力と手技を習得する。
- 死を美化することも、忌避することもなく、死への過程に敬意を払い、患者に死が訪れるまで、生きていることに意味を見いだせるような治療・ケアの基礎的技術を習得する。
- 臨死期にあたり、家族教育や家族ケアの重要性を理解する。
方略(LS)
1.入院業務
- 入院時アセスメント:指導医・担当看護師とともに問診・診察・検査を行いつつ病態評価を行う。また患者・家族の想い、希望、今後の予定などを聴取し、自立度、家族関係、事前意志表明、代理人指名なども併せて評価する。
- 治療計画概要の立案:上記を踏まえ、今後の目標を患者・家族・医療者が共同で設定し、治療計画概要を立案する。
- インフォームドコンセント:入院後なるべく早期に患者・家族に病態評価ならびに治療計画を含んだ説明を指導医とともに行う。具体的治療計画はカンファレンスにてスタッフに周知する。
- カンファレンス:定期的なカンファレンスにて、情報共有・ケアプランの修正・必要な他業種への依頼・外泊や退院の準備等を行う。
- 病態変化時の説明:全身状態悪化時に適切な評価と病状説明を患者・家族に行い、ケアプランの修正を含めた同意を得る。
- 看取りのケア:看取り期と判断された場合、患者・家族に病状説明を行い、看取りへの準備(クリニカルパス発議・ケアの修正・やり残しの確認など)を行う。
- 鎮静:いかなる一般的治療によっても耐え難い苦痛が残存し、病期として終末期と評価される場合には、十分なインフォームドコンセントの上、「苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン」(日本緩和医療学会編)に基づき鎮静を考慮する。
2.緩和ケアチーム(PCT)業務
- 院内紹介:入院中または外来通院中の患者に関し、一般診療科主治医・担当看護師の依頼を受けて、指導医とともに病状評価ならびに症状コントロールを行う。
- 院外紹介:他院通院中で当院緩和ケアチームの介入依頼を受けて、指導医とともに病状評価ならびに症状コントロールを行う。
3.外来業務
- 院内・院外の患者に対して、指導医とともに初診時アセスメントを行い、外来通院にて症状コントロールを図る。
- 病状悪化時またはレスパイト目的で入院加療が必要と思われるとき、入院へのスムーズな移行を適切に行う。
4.教育・研究・発表
- 所属する医療機関及びその地域において、緩和医療の啓発・普及・教育に努める。
- 緩和医療に関する学会・研究会・研修会等に積極的に参加し、業績を発表するとともに、専門誌などにそれらを発表するように心がける。
評価(EV)
- 日本ホスピス緩和ケア協会編の緩和ケア病棟における医師研修指導指針に基づき、ワークシート(目標書き出しシート・日々の体験シート・ふりかえりシート・成長エントリーシート・成長報告書)を用いる。
- 緩和ケア病棟における医師研修スケジュールをもとに、学習項目の到達度を確認する。
- 1ヶ月ごとに目標設定及び自己評価ならびに指導者からの評価を受ける。最終日に指導医または部長の修了認可を受ける。
研修期間
原則として1年間。ただし、専門医を目指す者で、2年次以降の研修延長を希望する場合は、指導医との面接・1年次の業務態度・スタッフからの講評をもとに決定する。
後期研修医週間予定例
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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午前 | 朝回診 クリニカルボード 病棟業務 |
朝回診 PCTカンファレンス PCT業務 |
朝回診 病棟業務 |
朝回診 医師カンファレンス 病棟業務 |
部長回診 病棟業務 |
午後 | 医師・看護師カンファレンス 病棟業務 |
多職種カンファレンス 病棟業務 |
外来 | 病棟業務 | 医師・看護師カンファレンス (精神科コンサルタント含む) 病棟業務 |
夕 | 夕回診 | 夕回診 | 夕回診 | 夕回診 | 夕回診 |
PCT=Palliative Care Team(緩和ケアチーム)
緩和ケア病棟における医師研修スケジュール(1年)
到達目標:下記8つの研修項目の態度と知識、技術を身につけると共に、チームのリーダーとしての役割を果たすことができるようになる。また、緩和ケアに関する研究テーマを定め、一つの研究に取り組むことができる。