循環器内科 後期研修プログラム
近年循環器疾患の診断・治療の進歩には目を見張るものがあります。虚血性病変に対する診断やカテーテル治療は、新しい装置や器具(マルチスライス高速CTや薬剤溶出性ステントなど)の登場により、従来に比べてより安全確実となりました。当科では外来での虚血性心疾患の診断に最新式の320列CTを用いており、左主幹部病変、分岐部病変、慢性完全閉塞病変などの複雑病変や下肢の動脈硬化病変にも血管内超音波(IVUS)、光干渉断層法(OCT)、血流予備量比(FFR)などを併用しながら、積極的にカテーテル治療を行っています。心房細動に対する肺静脈隔離術をはじめとして不整脈に対する全てのカテーテルアブレーションは最新式の心内マッピングシステムを用いて行われています。難治性の心不全や致命的不整脈を合併する心不全に対してはCRT/CRT-Dを積極的に導入しています。
この様に、次々と登場する新しい高度医療技術のいずれもが当科に導入されており、日々の治療に用いられています。上記の様な高度医療技術が提供できる最新の設備とスタッフの存在のため、当科は日本循環器学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本不整脈学会・日本心電学会等の研修施設に認定されています。
循環器疾患では、一人の患者さんの救急救命治療に複数の医師、看護師、検査技師、医療工学士などが同時に関わる場面が多いのも特徴のひとつです。また、急性期を乗り切った後の回復期においても、退院に向けてのリハビリ、退院後の生活指導などには医師以外の多くの医療職の連携によるチームプレーが不可欠です。この為、当科では医師、看護師、検査技師、薬剤師、ケースワーカー、事務職員が一体となったチーム医療を、患者さんを中心にして実践しています。
以上のように当科の研修においては、充実した設備とスタッフを背景に高度な医療技術に触れることができ、循環器領域の全ての疾患を経験することが可能です。
一般研修目標(GIO)
循環器内科医として必要な循環器疾患についての知識の修得とともに基本的な診療手技を身につけ、研修終了後は循環器内科専門医資格を取得することを目標とします。研修内容にはCCU/HCUなどでの集中治療管理などを含めた診療技術を身につけることに加え、心臓カテーテル検査・ペースメーカー植え込み・電気生理学的検査(EPS)・経食道心エコーなどの基本的技術の習得や、PCI/EVT/不整脈アブレーション時に助手として加わることも含まれます。
具体的研修目標(SBOs)
1. 修得すべき検査法や手技
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医療面接
専門的な理学所見
医療記録
診療計画
静脈採血、動脈採血
胸部・腹部X線読影
心電図
トレッドミル運動負荷試験
ホルター心電図
心臓超音波検査
心臓カテーテル検査
スワン・ガンツカテーテル検査
心臓核医学検査
Head-up tilt 試験
CT(造影)、MRI
2. 修得すべき症状・病態・疾患
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胸痛
動悸
呼吸困難
浮腫
咳嗽・痰
発熱
めまい・失神
嘔気・嘔吐
心肺停止・ショック
心不全
意識障害
不整脈
心臓突然死
血圧異常、主に高血圧症
虚血性心疾患
弁膜症
心筋・心膜疾患
心臓腫瘍
肺性心・肺高血圧
深部静脈/肺 血栓・塞栓症
先天性心血管奇形
大動脈疾患
末梢動脈静脈・リンパ管疾患
心臓神経症
3. 修得すべき治療法
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循環器救急
薬物治療の専門的事項
向精神薬、麻薬の処方
末梢静脈カテーテル留置
中心静脈穿刺
動脈ライン留置
管注、静脈注射
深部動脈、静脈止血
胸腔、心嚢穿刺
胸腔ドレーン留置
心臓カテーテル治療術
一時的ペースメーカー装着
大動脈バルーンパンピング
経皮的心肺補助
血液透析
心血管手術適応の決定
心臓リハビリテーション
4. 修得すべき予防法
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循環器疾患の一次予防
循環器疾患の二次予防
疾病管理法
方略(LS)
- 入院患者の主治医を担当する。
- 毎日のカンファランスにて、的確にプレゼンテーションを行うとともに、指導医・上級医と治療方針の検討を行う。その際に、積極的に自らの治療計画を提示する。
- 日中の循環器救急受診患者を診察し、検査・治療法を立案し、上級医の指導のもと実践する。
- 1年目から心電図やホルター心電図の判読・報告、心筋シンチ検査の担当、CCU当直を行う。
- 2年目から外来を開始し、入院時の担当患者を引き続き診療する。
- 積極的に血管検査室での業務(PCI/EVT/Device植込み/カテーテルアブレーションなど)に参加し基本的手技を習得する。
- 学会や研究会で、症例や臨床研究を発表するともに、論文化する。
- 国内外の循環器関連学会・研究会に積極的に参加し、最先端の医療を学習する。
評価(EV)
日本循環器学会専門医研修カリキュラムを基本に、評価を行う。
評価者:自己ならびに指導医
評価時期:毎年度終了時
評価方法:自己記録ならびに指導医の面談
研修期間
院内の研修プログラムにより定める。