ロボット支援下手術ってどんなもの?

手術には、お腹を切り開いて行う開腹手術と穴を開けて行う腹腔鏡手術の2種類があり、ロボット支援下手術は腹腔鏡手術の1種です。
医師は操縦席のような部分に着座し、3Dモニターに映し出される鮮明な拡大画像を確認しながら手元のハンドルを操作。遠隔でロボットアームに装着された鉗子やメスを動かします。鉗子の先は360度回転し、人の手では届かないような場所にも入り込み繊細な作業ができるので、小さな動きで広範囲の処置ができるほか、手ブレ補正も備えているので、正常な臓器を傷つけない精巧な動きで悪い部分だけを取り除いていきます。
当院では、2019年にロボット支援下手術を専門とした部門を開設し、多くの疾患でロボット支援下手術を行っています。

ロボット支援下手術のメリット

  1. 機能の温存率の向上が期待できる。
  2. 傷が小さく痛みが少ない。
  3. 感染症や合併症のリスクを抑えることができる。
  4. 出血が少なく回復が早い。
  5. 入院期間が短く、早期の社会復帰が見込める。

大江院長によるインタビュー

治療法の1つとしてすっかりお馴染みとなったロボット支援下手術。2022年の診療報酬改定で保険適用となる治療がさらに増えました。ますます注目度が高まるロボット支援下手術について、大江隆史院長が2人のエキスパートにインタビューします!

2022年の診療報酬改定で保険適用が大幅に拡大

大江:まずは、当院で扱うもの以外も含めて、泌尿器と上部消化管で今現在ロボット支援下手術の保険適用となっているものを紹介してください。

中村:以前から保険適用となっているのが、前立腺の手術、膀胱全摘術、腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術(原発巣7㎝以下、腎部分切除)、良性疾患の腎尿管移行部狭窄症への腎盂形成で、他に女性の膀胱脱や子宮脱に対してロボット支援下で膣を仙骨に固定する仙骨固定術も保険が通っています。これらに加えて2022年4月に、副腎摘除術、腎尿管全摘除術、根治的腎摘除術などが追加になりました。

田中:上部消化管では、2018年4月に保険適用となった腹腔鏡下胃切除術(幽門側胃切除、噴門側胃切除術)、腹腔鏡下胃全摘術、胸腔鏡下食道悪性腫瘍手術、2020年に適用となった縦隔鏡下食道悪性腫瘍手術などになります。

大江:そのうち当院で治療を行っているロボット支援下手術はどれですか?

中村:泌尿器科では、前立腺悪性腫瘍手術腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術(原発巣7㎝以下のもの)と、膀胱全摘術良性疾患の腎盂尿管移行部狭窄症に対する腎盂形成手術の4つです。

田中:上部消化管手術では、腹腔鏡下胃切除(幽門側胃切除、噴門側胃切除)腹腔鏡下胃全摘胸腔鏡下食道悪性腫瘍手術です。

大江:今後ロボット支援下手術を取り入れていくものはありますか?

中村:泌尿器科では、腎臓を全摘除する根治的腎摘除術腎尿管全摘除術の導入を予定しています。

大江:胃切除と前立腺の悪性腫瘍は、腹腔鏡下の手術よりもロボット支援下手術のほうが診療報酬上の点数が高く加点されています。それは何が評価されてのことなのでしょうか?

中村:前立腺を全摘する際には中の尿道も取ってしまうため、おしっこの通り道をつくるために膀胱と尿道を吻合しなくてはなりません。その際、ロボット支援下手術では自由度が高く、吻合の後のおしっこの漏れや狭窄の合併症がかなり少なくなります。それが1つの評価のポイントだと思います。

大江:胃の治療は今年保険点数が増点されましたが、その理由は何だと考えますか?

田中:2018年にロボット支援下胃切除が初めて保険診療の適応になったのは、2014年10月よりステージIまたはIIの胃癌を対象として先進医療で多施設共同前向き単群試験が実施され、ロボット手術は従来の腹腔鏡手術と比較して合併症発生率を軽減することが示されたことによりますが、この試験では最終的にロボット手術を受けた患者さんの方が生存率が改善されたことを受けて、2022年4月の診療報酬改定でロボット支援下胃切除に診療報酬加算がつくことになりました。
※薬機法上の承認等が得られていない医薬品や医療機器を用いた医療技術、もしくは薬機法上の承認等を得た医薬品・医療機器を用いていても、安全性や有効性等を検討するために、実施環境や技術の効果等について重点的な環境や評価が必要とされるもの