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― NTT東日本関東病院 腫瘍内科、泌尿器科・放射線科(核医学)における前立腺がんの新たな治療選択肢
前立腺がんの治療は近年大きく進歩し、病状や治療歴に応じて選択肢が広がっています。
なかでも、PSMA(前立腺特異的膜抗原)を標的とした放射性核種療法(PSMA-RLT)は、これまでの治療が難しくなった前立腺がんに対する新しい治療選択肢として注目されています。
当院では、腫瘍内科、泌尿器科と放射線科(核医学)が連携し、検査から治療、治療後のフォローまでを一貫して行う体制のもと、患者さん一人ひとりの状況に応じた治療を提案しています。
PSMA標的放射性核種治療(PSMA-RLT)とは
放射性核種療法は、がん細胞に集まりやすい性質をもつ物質(標的)に放射性物質を結合させ、がん細胞の内側から放射線を照射してがん細胞を攻撃する治療法です。
前立腺がんの細胞では、PSMA(前立腺特異的膜抗原)と呼ばれるたんぱく質が多く発現していることがあります。
PSMA-RLTでは、このPSMAを「標的」として薬剤ががん細胞に集まり、取り込まれた放射性核種からの放射線によってがん細胞を傷害することを狙います。
どのような前立腺がんが対象になるのか
PSMA-RLTは、主に去勢抵抗性前立腺がん(詳しくはこちら)、特に遠隔転移を有する状態の患者さんで検討される治療です。
去勢抵抗性前立腺がんとは、男性ホルモンを抑える治療(ホルモン療法)を行っても、がんの進行が止まらなくなった状態を指します。
ただし、すべての患者さんが対象になるわけではありません。
治療前には、がん細胞にPSMAが十分に発現しているかどうかを確認する検査(PSMA-PETなど)を行い、治療の適応を慎重に判断します。
PSMA-RLTの特徴
がん細胞を狙う治療
PSMAを標的とすることで、がん細胞に放射線を集中的に届けることを目指します。
新たな治療選択肢としての位置づけ
これまでの治療で効果が得られにくくなった前立腺がんに対して、次の選択肢のひとつとして検討できる可能性があります。
※適応は患者さんごとに異なります。治療の選択にあたっては、主治医と十分に相談することが大切です。
プルヴィクトによる放射性核種療法の仕組み

治療の流れ
当院では、腫瘍内科、泌尿器科、放射線科を中心に、多職種が連携して治療を進めます。
①診察・治療相談
これまでの治療経過や現在の症状、全身状態を確認します。
②必要な検査の実施
血液検査や画像検査などを行い、治療に必要な情報を集めます。
③PSMA発現の評価
PSMA-PETなどの検査により、治療対象となるかを確認します(PET検査が可能な施設へのご紹介もいたします)。
④多職種による治療適応の検討
腫瘍内科・泌尿器科・放射線科(核医学)などが連携し、治療の適応と安全性を総合的に判断します。
⑤放射性リガンド療法の実施(入院)
放射線管理の観点から、一定期間の入院で治療を行います。
⑥治療後の経過観察
外来で定期的に診察を行い、効果や副作用を確認します。
プルヴィクトによる治療のスケジュール(治療全体)
プルヴィクトによる放射性核種療法は、一定の間隔で複数回投与を行う治療です。一般的には、約6週間ごとに投与し、最大6回まで実施します。
治療全体としては、おおむね数か月(約8か月程度)の期間を見込みます。
また、本治療は放射線管理の観点から治療後に一定期間の特別措置病室への入院が必要となるため、治療日程は病床の受け入れ状況なども含めて調整します。
※投与回数・間隔・入院期間は、患者さんの状態や検査結果によって変わることがあります。

入院について(個室:特別措置病室)
放射性核種療法は放射性物質を含む薬剤を用いる治療であるため、治療を受けた後に周囲の方への被ばくに配慮した放射線管理が一定期間必要になります。
当院では、個室(特別措置病室)で入院して治療を行います。入院する部屋は、放射線の放出に対して周囲への被ばくを考慮した特別な病室です。
※個室料金はかかりません。
放射性物質を含む薬剤の多くは尿から排出されるため一般下水に流すことができません。そのため入院中は、専用の鉛の容器に尿を貯めて、流さないよう注意していただきます。
また、トイレ内が汚染してしまわないよう、床などにカバーをしています。


入院から退院までの主な流れ
【入院日】
病室でスタッフから治療の説明、注意事項などの確認があります。特に、治療後の移動の制限や尿の管理などは、周囲の方の被ばくを避けるために重要です。朝食後に放射線治療室に移動します。
【治療当日】
治療室での薬剤の投与は30分程度です。点滴終了後は医療者とともに病棟へ戻り、翌日までは個室のなかでお過ごしいただきます。
【退院日】
投与翌日には、医師と放射線技師が専用の測定器を用いて、放出される放射線量を測定します。測定量が退院の基準値を下回っていれば退院が許可されます。放射線量が基準値より高い場合には、退院が延期となる可能性があります。以後は定期的に外来で副作用の有無などを確認しますので、数週間ごとに来院していただきます。
副作用・安全性について
PSMA治療では、血液検査値の変動や倦怠感、口の渇きなどの副作用がみられることがあります。
また、放射性物質を用いる治療であるため、入院中や退院後の生活上の注意についても丁寧な説明が必要です。
当院では、腫瘍内科、泌尿器科・放射線科などが連携し、安全に配慮した治療管理を行っています。
検査結果をもとに、病気の経過や副作用の程度を見極めて、次の治療を行うか判断します。
放射性リガンド療法の薬剤は完全受注生産のため、次回の治療の実施が決まった段階で発注を行います。
当院ではやむを得ない理由以外での自己都合のキャンセルの場合は、原則薬剤費をお支払いいただくことについて事前にご了承いただいています。
PSMAを標的とした放射性核種療法は、これまでの治療が難しくなった前立腺がんに対する新たな選択肢です。
一方で、すべての患者さんに適応となるわけではありません。
当院では、腫瘍内科、泌尿器科と放射線科が連携し、患者さん一人ひとりの状態を丁寧に評価したうえで治療をご提案しています。
患者さん・ご家族へ
前立腺がんの治療は進歩しており、これまでの治療が難しくなった場合でも、新たな選択肢が検討できることがあります。
PSMA治療について気になる点がありましたら、腫瘍内科へご相談ください。
先生にお話しを聞きました!

腫瘍内科部長 倉持 英和
1994年筑波大学医学専門医学群卒業。東京女子医科大学病院、筑波胃腸病院、University of Southern California、東京女子医科大学八千代医療センターを経て当院。臓器横断的に腫瘍を診る中でも、消化器がんを中心とした化学療法と緩和ケアを得意する。日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医。

泌尿器科部長 中村 真樹
2001年東京大学医学部卒業。2011年東京大学大学院医学系研究科外科学専攻修了。専門は、泌尿器悪性腫瘍、ロボット支援下手術。東京大学医学部附属病院などでの勤務を経て、2023年より現職。東京大学医学部非常勤講師。東京医療保険大学 大学院看護学研究科 臨床教授。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医。

放射線科主任医長 日下部 将史
2001年東京大学医学部卒業。2010年東京大学大学院医学系研究科外科学専攻修了。東京大学医学部附属病院、日立製作所総合病院を経て2010年より当院に着任、2025年より現職。放射線診断専門医・放射線科研修指導者、放射線科専門医。

