年齢とともに強くなる膝の痛み 原因は「変形性膝関節症」かも

膝関節は、大腿骨と脛骨、膝蓋骨(お皿)から成り、大腿骨と脛骨の内側・外側、および大腿骨と膝蓋骨の間の3カ所に関節があります。この3つの関節をサポートする軟骨がしだいにすり減り、外部からの衝撃を和らげるクッションとしての役割を果たさなくなることによって、関節の痛みや変形が起きるのが「変形性膝関節症」です。変形性膝関節症は、比較的高齢の方に多いといわれていますが、生まれつきの骨の形や、スポーツや仕事で早くから膝を酷使していた方の中には、若くして発症する方も少なくありません。

加齢で摩耗した関節だけを交換する人工膝関節単顆置換術

変形性膝関節症の治療には、大きく2つの方法があります。1つは、薬物療法や運動療法で改善を図る保存療法。もう1つは、保存療法で効果が得られない場合に選択される「人工膝関節置換術」と呼ばれる手術療法です。従来の人工膝関節置換術では、膝の関節全体を人工関節に置き換える「人工膝関節全置換術」が一般的に行われてきました。回復が見込めない関節を人工関節に置換することで痛みを軽減し、安定した歩行を取り戻す根本的な治療法だといえるでしょう。 当院では、人工膝関節置換術が必要な患者さんで、痛みのある部位が膝の内側・外側のいずれかに限局していること、変形が軽度で膝関節の靱帯に異常がないこと、などの一定の条件を満たす場合、痛みがある部分のみ(主に内側)を人工関節に置き換える「人工膝関節単顆(たんか)置換術」を行うこともできます。通常の人工膝関節全置換術に比べて手術中の出血や術後の疼痛を軽減できるうえ、靱帯を残すことで術後の回復が早く、早期社会復帰が可能になるなどメリットの多い手術です。ただし、膝関節の構造上、見える範囲が狭く、正確な骨切りや正確なインプラントの設置などの難易度が高い手術とされてきました。また、膝の形は人によって異なりますが、個々の膝の状態に合わせてそれらを細かく微調整するのもなかなか困難です。

関節と靱帯
膝は、大腿骨と脛骨、膝蓋骨(お皿)などで構成されており、大腿骨と脛骨を関節軟骨が覆っています。また、外側側副靱帯、内側側副靱帯、後十字靱帯、前十字靱帯4つの靱帯が膝の安定を支えています。4つの靱帯に異常がないことは、人工膝関節単顆置換術を行う条件の1つです。

ロボット支援下手術でより低侵襲な人工膝関節単顆置換術を

当院では、人工膝関節単顆置換術にも、既に人工膝関節全置換術で活用しているロボティックアーム手術支援システムの利用を開始しました。ロボティックアーム手術支援システムを使うと、CTなどの検査をもとに人工関節を入れる場所を特定し、正確かつ安全に術前計画通りに手術を行うことができます。個々人の骨の形はもちろん、関節の硬さ、柔らかさも加味して骨を切る量や角度を微調整できるので、より自然な膝の動きを実現できるのもロボット支援下手術ならではの強みでしょう。なお、患者さんの膝の状態を慎重に見極めたうえで、人工膝関節単顆置換術の適応がない場合には、ロボティックアーム手術支援システムによる人工膝関節全置換術に移行しています。できるだけ侵襲の少ない方法で生活の質を向上させることができるよう、膝に痛みがある方は我慢せず早めにご相談ください。

術前計画に基づいた正確で安全な手術が可能。骨を切る角度や量も、個人の膝の状態に合わせて微調整できる。

先生よりメッセージ

立ち上がるときや歩き始めなど「初動」で痛む膝は、もしかしたら変形性膝関節症かもしれません。進行するほど治療の選択肢が限定されますので、なるべく早く検査を受けて、早期に治療を始めましょう。