下肢静脈瘤をはじめ外科手術の実績も多数

従来、皮膚の表面にトラブルが起き、外科手術を必要とする際には、診断後に外科や形成外科が手術を担当するのが一般的でした。しかし、皮膚科を専門とする医師はあらゆる皮膚疾患のプロフェッショナルであることから、診断した皮膚科医自身がメスを握ることの有用性が議論されてきたのです。そして、皮膚科学の知識が十分にある医師が手術を行う皮膚外科が生まれました。当院の皮膚科では、皮膚外科にも積極的に取り組んでいます。
皮膚外科による外科的治療を必要とする皮膚疾患には、下肢静脈瘤、皮膚腫瘍、皮膚潰瘍などがあります。中でも下肢静脈瘤は、2008年から専門外来で診療してきた疾患で、多くの実績を積み重ねてきています。一連のプロセスを専門家が責任を持って包括的に実施できることは、高い専門性を持つ皮膚科の特徴でもあります。下肢静脈瘤の手術は局所麻酔でほとんどの方は日帰りが可能ですから、治療せず放置して悪化する前にぜひご相談ください。術後の痛みも多くの場合はほとんどなく、すぐに日常生活に復帰することができます。

当院が積極的に取り組む皮膚の外科的治療

下肢静脈瘤

下肢静脈瘤イメージ

【症状】 足の静脈が膨らんでこぶのように浮き出て見える状態。だるさ、重さ、むくみ、痛みなどの症状が出ることがあります。
【原因】 立ちっぱなしの仕事が多い方、高齢で筋力が低下した方、家族歴がある方などが発症しやすいです。足の静脈圧が高まるなど、静脈弁への負荷が長く続くことが要因と考えられます。
【治療法】 命に関わることは少ないものの、外見上の問題や、日常生活を阻害する不快な症状を改善するために治療をすることが多いです。重症の場合はレーザーなどを使用した血管内焼灼術、軽症の場合は弾性ストッキング着用による圧迫療法が効果的でしょう。

皮膚腫瘍

皮膚腫瘍イメージ

【症状】皮膚のできもののこと。皮膚の表面が盛り上がったり、しこりができたりします。粉瘤、脂肪腫などの良性腫瘍と、基底細胞がん、有棘細胞がんなどの悪性腫瘍があり、当院では悪性黒色腫を除いたすべての腫瘍に対応しています。
【原因】腫瘍ができる原因はさまざまですが、悪性腫瘍は長期にわたる紫外線の影響が大きいともいわれ、外傷や熱傷といった刺激が原因になることもあります。
【治療法】良性腫瘍の治療は、大きさにもよりますが日帰り手術か1泊入院を基本とし、悪性腫瘍の場合は腫瘍とその周辺の皮膚を切除。切除範囲が大きい場合は、別の部位から皮膚を移植する植皮手術も皮膚科で行い、整容的な部分は形成外科の協力を仰いでいます。

皮膚潰瘍

皮膚潰瘍イメージ

【症状】足にできた切り傷や擦り傷がなかなか治らず、皮膚がなくなった状態。いろいろな原因によって、皮膚の欠損が深部に及び、治りにくい状態になります。
【原因】外傷のほか熱傷、糖尿病や動脈硬化などによる動脈の血流障害、褥瘡、下肢静脈瘤による静脈のうっ滞など。
【治療法】重症下肢虚血による動脈性潰瘍は、循環器内科による血管内治療で狭窄した動脈を拡張して治療を行います。静脈性のうっ滞性潰瘍で下肢静脈瘤が原因であれば、外科治療を行った後に圧迫療法を実施。潰瘍の範囲が広い場合は、入院による治療となります。

より充実した治療に向け必要に応じて他科と連携

皮膚腫瘍のうち、粉瘤や母斑などは日帰り手術に対応。大きめの脂肪腫などは入院手術で切除しています。整容的に問題になる可能性がある場合は、形成外科に協力を依頼します。疾患の根治と見た目の維持を両立するため、連携して手術を行います。皮膚潰瘍の重症例についても同様に、形成外科、循環器内科、リハビリテーション科などと連携しながら適切な治療を実施します。糖尿病に伴う皮膚トラブルがある方、乾癬による関節症状の詳しい診察が必要な方などについては院内の糖尿病内科やリウマチ・膠原病内科との連携をより強化して一貫した治療を行える体制の構築をめざしています。
皮膚科は、医師の知見と経験によって、提示できる治療の選択肢に差が出ることが多い診療科です。できるだけ多くの治療の選択肢を提示し、その中から患者さん一人ひとりにとって「医学的にも治療的にも、そして患者さんの希望に合わせたベストな治療」を選べることは、当院の大きな強みだといえるでしょう。難治性の疾患や、治療に時間がかかる疾患も今なお存在しますが、皮膚科全体の治療が進歩しています。長年にわたって変わらない症状に悩んでいる方は、勇気を持って新しい治療も選択肢に入れてみてください。

先生よりメッセージ

出月健夫写真_コメント用

難治症例や重症例など、治療のステップアップが必要なときには当院にお声がけください。症状が落ち着けばかかりつけ医にお戻しし、「人と地域とつながる医療」を実践してまいります。

井波真矢子写真_コメント用

ヘルペスやニキビといった身近な皮膚トラブルの治療も、ここ数年で様変わりしました。確実に良くなる治療を見つけるために、ぜひ当院にご相談ください。