当院は、24時間365日脳卒中の患者さんを受け入れ、rt-PA静注療法を含む治療を速やかに開始できる「一次脳卒中センター(PSC)」として積極的な診療を行ってきました。その実績から、現在では常時機械的血栓回収療法を行える「PSCコア施設」となっています。
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脳卒中による死亡率は減少 迅速な初期対応で予後をより良く
脳の血管が詰まったり、破れたりすることによって起こる「脳卒中」。
脳卒中には、脳の血管が詰まる脳梗塞、脳の血管が破れて脳内に出血する脳出血、脳動脈瘤と呼ばれる動脈のこぶが破裂するくも膜下出血の3つがあり、年々死亡率が減ってはいますが今なお日本人の死因の第4位に位置しています。
脳卒中によって一度失われた脳の機能は回復しにくく、後遺症となります。そのため、治療が遅れると著しく予後が悪くなり、命が助かっても要介護、要支援の状態になる人がとても多いのです。脳卒中の予後は時間との勝負。発症後、どれだけ速やかに治療を開始できるかで、その後の生活の質が大きく変わってきます。
治療技術が向上し、助かる患者さんは増加している
発症から4.5時間以内の急性期脳梗塞には「tPA療法(血栓溶解療法)」といって、詰まった血栓を溶かす治療が行われます。最近では、起床時に発症していて発症時間がわからないケースでも、MRIの所見によってはtPA療法を選択することが可能です。太い血管が詰まっている場合、カテーテルで詰まった血栓を除去する「血栓回収療法」が行われます。こちらも、おおむね発症から8時間以内が適応とされてきましたが、治療技術の向上で発症24時間以内または発症時間不明でも施行できるケースが増えました。これまで諦めざるを得なかった方にも治療のチャンスが拡大しています。
いついかなるときも、地域の脳卒中患者さんを受け入れる
一次脳卒中センター(PSC)は、地域の医療機関や救急隊から脳卒中患者の受け入れを打診された際に、24時間365日要請に応え、速やかに治療を開始できる施設のことです。NTT東日本関東病院の脳血管内科と脳神経外科はどんなときも緊急の受け入れをするなど地域の脳卒中治療ネットワークの連携を牽引してきました。2020年からは、PSCとして一定以上の高い成果を出し、緊急の要請に対してフレキシブルに対応できる人員、設備を有する施設が対象となる「一次脳卒中センターコア認定施設(PSCコア施設)」の認定を受けています。
多職種が連携し、患者さんをサポート「脳卒中相談窓口」
PSCコア施設の認定を受けるにあたり、新たに「脳卒中相談窓口」を設置しました。脳卒中相談窓口は、脳卒中の患者さんに対する適切な情報提供を行うことを目的として、脳卒中専門の看護師、医師、社会福祉士などがさまざまなご相談に応じます。
一次脳卒中センターコア認定施設(PSCコア施設)とは?
PSCのうち、日本脳卒中学会が定めた条件を満たし、脳血栓回収治療を24時間365日体制で治療可能な医療機関です

認定基準
一次脳卒中センターコア認定施設(PSCコア施設)は下記の5項目を満たすことが求められています。
- PSCに認定されていること
- 日本脳神経血管内治療学会の脳血管内治療専門医と3学会認定の脳血栓回収療法実施医が合計して常勤3名以上であること
- 血栓回収治療実績が年間12例以上あること
- 自施設において24時間365日、血栓回収治療に対応可能であること
- 脳卒中相談窓口を設置すること
※地域の医療機関や救急隊からの要請に対して、24時間365日脳卒中患者さんを受け入れ、急性期脳卒中診療担当医師が、患者搬入後可及的速やかに診療(rt-PA静注療法を含む)を開始できる施設
PSCコア施設のNTT東日本関東病院
2023年6月現在、東京都内のPSCコア施設は全部で30施設。NTT東日本関東病院周辺には港区三田の東京都済生会中央病院、目黒区の国家公務員共済組合連合会三宿病院、東邦大学医療センター大橋病院があります。当院には大田区、品川区を広くカバーする役割が期待されています。
先生よりメッセージ
これまで、当院はPSCとして脳卒中や脳卒中を疑う患者さんを24時間365日受け入れてきました。今後はPSCコア施設として、地域の医療機関からの要請に応じた重症の方の受け入れ、およびリハビリ施設などとの連携による在宅復帰支援に注力し、1人でも多くの脳卒中患者さんの予後改善と社会復帰に向けて尽力してまいります。

先生にお話を聞きました!

脳血管内科 部長 大久保 誠二
1995年日本医科大学医学部卒業。東京都立多摩老人医療センター神経内科、日本医科大学付属病院内科 神経・腎臓・膠原病リウマチ部門、東京都医療保健公社多摩北部医療センター 神経内科、日本医科大学付属病院 神経・脳血管内科を経て2017年よりNTT東日本関東病院脳血管内科部長。