夢中で飛び込み手にした世界に通じる実績

私は心臓外科医としての30年間に大動脈弁、冠動脈を中心とした手術を多く手がけてきました。その礎を築いたカナダ留学の話を紹介させてください。1999年、私は大動脈弁のスペシャリストであるクリスタキス医師に教えを請うためトロントに渡り、幸運にも臨床医をめざすチャンスを得ました。その条件の一つが英語の試験をパスすること。1年で合格したものの、苦戦しました。しかしそ のおかげで、勉強の傍ら研究発表した論文がAATS(米国胸部外科学会)に採択されたのです。AATSで選ばれる演題は年間わずか60題ですから、身に余る光栄でした。

手術1000本ノックで苦しくも着実に腕を磨いた

臨床医になると今度は、1日6例の手術を3つの手術室で回すというシビアな現場が待っていました。誰も私に教える余裕などなく、助手として手術を見て学ぶこと半年、医師の1人が欠けて私に順番が回ってきたのです。毎日付き切りで教えていただき、急ピッチで技術を身につけ、1週間後に独り立ちを迎えてからは毎日が手術。それも99%が冠動脈バイパス手術で、2001年9月から2002年3月に帰国するまでに160例ものバイパス手術を経験しました。

過酷な環境でこそ学べることがある

日本の手術は丁寧さを重視して進められますが、カナダをはじめ欧米では必要最低限の処置に集中して素早く終わらせます。それが患者さんの負担軽減につながるというのです。また、スピード最優先の中では画期的な手法も生まれます。クリスタキス医師が執刀した患者さんに、ある死亡率の高い合併症が起こった時のこと。本来なら手術をやり直すところ、先生はマニュアルにはない方法で止血してみせたのです。患者さんは回復し元気に退院されました。これらのことから、セオリーにとらわれず、目の前の患者さんを救うためにできることを考え抜く大切さを学びました。涙も出ないほど過酷な日々でしたが、当時の経験は今でも私の糧となっています。

  1. セオリーも現場感覚も
    手術にはイレギュラーが付き物です。基本的なルールに則りつつも、目の前の患者さんに合った臨機応変な対応を大切にしています。
  2. 負担の少ない素早い手術
    丁寧でありながらも時間をかけないことが大切。安全性と患者さんの負担を最優先に考えながら、できる限り素早く手術を進めます。
  3. 将来を見据えた医療の提供
    患者さんの年齢や体力、手術後にどのように暮らしていかれるかをイメージして、最適なアプローチの方法を考えます。

何事も究めた先に楽しさがある“華山流”ストイックな生き方

実はボディビルダーとしての一面も持つ華山部長。第28回東京オープンボディビル選手権では見事3位入賞を果たしました。きっかけは8年前に始めた筋トレ。健康維持のつもりが熱中し、今ではベンチプレス120kgを優に挙げられるそうです。それ以前はマラソンが趣味で、ハーフマラソンはなんと1時間45分で完走。「手術があった日も毎日30km走っていました」と淡々と語る華山医師ですが、医療への熱い思いに通ずるストイックさがうかがえました。なお、体脂肪は驚異の3%。自らの減量経験が患者さんへの食事指導に生かされているそうです。