発声や摂食などの機能に大きく影響「早期に小さく切除」で QOLを守ろう

咽頭がん、喉頭がんは、頭頸部がんのうち「のどのがん」に分類されるがんです。物を食べる、声を出す、呼吸をする、といった機能を担う部位のため、根治性と機能温存のバランスを見ながら治療する必要があります。

頭頸部ってどこ?

頭頸部は、眼球と脳を除いた鎖骨より上のすべての領域です。頭頸部に含まれる咽頭・喉頭、口腔、鼻・副鼻腔などにできるがんを包括的に「頭頸部がん」と呼びます。

  • 咽頭(いんとう):咽頭は鼻腔の奥から食道の入り口までで、鼻腔に近い方から「上咽頭」「中咽頭」「下咽頭」に分かれます。上咽頭は鼻呼吸の通り道であり、中咽頭と下咽頭は呼吸、食べ物の通り道としても重要な役割を果たしています。
  • 喉頭(こうとう):喉頭は、一般に喉ぼとけと呼ばれる部分にある器官のことです。咽頭から気管へ続く空気の通り道で、蓋(ふた)のように開閉する喉頭蓋が誤嚥を防いでいます。また、喉頭には声帯があり、発声機能を担います。人目につく部分でもあり、手術時は整容性に配慮が必要です。

発生する部位によって細分化され、部位ごとに治療方針が異なる

初期症状が現れにくいため健診などでの早期発見が重要

頭頸部がんの患者数は、全国で年間5~6万人ほどです。5大がんと呼ばれる胃がん、大腸がん、肺がん、子宮がん、乳がんに比べると発生頻度は低く、頭頸部のさまざまな部位にできるため、各部位ではさらに割合が小さくなります。初期には症状が現れにくいため、受診の機会を逃したことが発見・治療の遅れにつながることが少なくありません。
進行して見つかると、生活していく上で不可欠な呼吸、嚥下、発声などの機能、および嗅覚、味覚、視覚、聴覚といった感覚に大きな影響が残る恐れがあるため、人間ドックなどで早期に見つけることが非常に重要です。

咽頭がん

【上咽頭がん】
鼻腔に近い、のどの上部に発生するがんです。耳と鼻をつなぐ耳管が詰まることによる耳の閉塞感、頸部リンパ節に転移した場合の首のしこりなどで気づくことが多いでしょう。鼻詰まりや鼻血が発見の契機になることも。

【中咽頭がん】
中咽頭は食べ物と空気が通る場所であり、初期症状は物を飲み込む際の痛みや違和感、口の開けにくさ、頸部のしこりなど。
喫煙、飲酒のほかウイルスによって発症するケースも多く、近年増加傾向にあるとされます。

【下咽頭がん】
喉頭の後ろあたりに発生するがんです。初期は症状が乏しく、進行すると物を飲み込みにくくなったり、声がかすれたりします。リンパ節に転移しやすく、首の腫れなどで受診する人も少なくありません。

喉頭がん

【声門がん】
声帯にできるがんです。声を出す機能に影響が及ぶため、比較的早い段階で声のかすれや息苦しさの自覚症状が見られるでしょう。早期発見できれば、声を温存しながらの治療が可能です。

【声門上部がん】
声門上部がんの初期は喉の異物感や痛み、いがらっぽさなどがありますが、人によっては初期症状がほとんどないことも。
転移が起こりやすく、早期から首の腫れが見られることがあります。

【声門下部がん】
声門下部がんはまれな疾患ですが初期症状が現れにくく、進行して初めて息苦しさや声がれが現れるため、注意が必要です。

その他

【鼻・副鼻腔がん】
鼻の内部にできるものが鼻腔がん、周辺の空洞にできるものが副鼻腔がんです。鼻詰まり、鼻血、頬のしびれなどが片側だけに継続する場合は受診をお勧めします。

【口腔がん(舌がん含む)】
舌や歯肉などにできるがんです。初期には痛みや出血は少なく、粘膜の色の変化やしこりなどで気づくことが多いでしょう。
歯医者で発見されることも少なくありません。

【唾液腺がん】
唾液腺にできるがんです。耳下腺、顎下腺への発生が多く、無痛性のしこりが初期症状です。顔面神経に触れると、顔が動かしにくくなることもあります。

【甲状腺がん】
男性より女性に多く、若年層にも発生するがんです。のどぼとけの下のしこり、首のしこり、声のかすれなどの症状は甲状腺がんが疑われます。