血管を流れ、脳や心臓、胃、腸などに栄養や酸素を運ぶ血液は、骨の中心にある「骨髄」で作られ、「血しょう」と呼ばれる液体と、「赤血球」「白血球」「血小板」という細胞からできています。こうした血液の成分や、血液の製造を担う工場に異常が起こり、血液が作られなくなったり、血液の細胞が増えたり減ったりする血液の病気を知るために、それぞれの働きを見ていきましょう。
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生命の維持に関わる血液の病気 定期検査での早期発見が鍵
血液検査を機に、偶然見つかることも多い血液の病気。動悸、息切れ、めまいといった自覚症状がある貧血のような病気もありますが、白血病をはじめとした血液のがんは症状が出ないことも多く、患者さんにとってはわかりにくい病気かもしれません。しかし、「血を止める」「酸素を運ぶ」「細菌など異物と戦う」といった血液成分の働きは生命の維持に大きく関わるものであり、早期発見・早期治療が必須です。 当院では、健康診断や人間ドックの血液検査で異常が発見された方、あるいはかかりつけ医での血液検査をきっかけに紹介を受けて受診された方、当院を別の病気やけがなどで受診していて異常が見つかった方などに対して、血液内科にて抗がん剤や分子標的薬、造血幹細胞移植などの治療を行っています。また、新薬を用いた治験も積極的に行っています。ご自身や身近な人のもしもの時のために、血液の機能や病気のことを知っておきましょう。

【1.血小板】 ![]() |
血液の中にある細胞の一つ。血を止めたり、固めたりします。 |
【2.赤血球】 ![]() |
血液中の細胞の一つです。肺が取り込んだ酸素を、全身の組織へ運ぶ働きをしています。 |
【3.血しょう】 ![]() |
血液中の液体成分。栄養や酸素を各組織に運んだり、老廃物を運び出したりします。 |
【4.骨髄】 ![]() |
骨の中心部にある血液細胞(白血球、赤血球、血小板)を作る組織。骨髄内部から十分に成熟した血液細胞のみが血液中に出ていきます。 |
【5.白血球】 ![]() |
血液中の細胞の一つ。体内に侵入してきた異物と戦い、免疫を正常に保ちます。 |
血液の主な病気
急性骨髄性白血病 | 白血病は細胞の種類によって骨髄性とリンパ性に分けられます。急性骨髄性白血病は、骨髄中の未熟な細胞ががん化して急激に増殖し、正常な細胞が減少します。 |
急性リンパ性白血病 | 免疫に関わる成熟した細胞のリンパ球ががん化し、急速に増殖・蓄積して他の臓器に影響を及ぼします。 |
骨髄異形成症候群 | 血液細胞を作る造血幹細胞に異常が起き、正常な血液ができなくなったり、減ったりします。一部は急性骨髄性白血病に移行することがあります。 |
悪性リンパ腫 | 血液中の細胞のうち、白血球の中のリンパ球ががん化し、異常に増殖する病気です。 |
多発性骨髄腫 | 骨髄の中にある、形質細胞と呼ばれる細胞ががん化して異常に増殖し、細菌やウイルスを攻撃する免疫グロブリンの産生を妨げます。 |
再生不良性貧血 | 血液を構成する白血球、赤血球、血小板がいずれも減少する病気です。だるさ、動悸、息切れなどの症状が起き、細菌感染を起こしやすくなります。 |
先生にお話を聞きました!

血液内科 部長 臼杵 憲祐
1984年群馬大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院内科、スウェーデンのルードヴィヒ癌研究所を経て、1993年からNTT東日本 関東病院勤務。得意分野は白血病、悪性リンパ腫、化学療法、再生不良性貧血。日本血液学会血液専門医、日本内科学会総合内科専門医。

血液内科 主任医長 市川 幹
1995年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、国立国際医療センター、東京都立駒込病院、湘南東部総合病院、獨協医科大学病院を経て2022年よりNTT東日本 関東病院勤務。得意分野は血液内科一般。日本血液学会血液専門医、日本内科学会総合内科専門医。