病気のこと、子どもにどう話したらいい?
がんという病気は、家族にとって大きな試練です。特に、子どもにとっては理解しがたいことも多く、どのように伝えるかは非常に重要なポイントとなります。
親ががんになるということは、親の入院や通院、体調の変化があるため、子どもの日常生活にも影響したり、親と一緒にいる時間が減ることで不安を感じたりすることもあります。また、テレビやインターネットなどの情報により、がんに対して様々なイメージを持ち、想像ばかり膨らんでしまうこともあります。
子どもに病状を伝える際には、まずは子どもに接する大人達が子どもにどのように向き合うかを話し合うことが大切です。患者さんを含めた家族内で統一した意見を持つことで子どもは家族に対する信頼感、安心感を持つことになりますし、対応する大人も落ち着いて子どもに対応することができます。
病気について子どもに伝えたいと思ったときには、次のことも参考にしてみてください。
子どもの年齢によって理解できる内容や話した後の反応も異なってくるため、具体的な内容や伝え方は、発達に応じた子どもなりの理解に合わせることが大切です。
- 一度にすべてを話そうと考えずに、一番伝えたいことから段階的に話す。
- 分かりやすく、子どもが理解できる表現で、できるだけ具体的な内容を伝える。
- 日々の生活でこれまでと「変わること」と「変わらないこと」を伝える。
- 親の気持ちを伝える。
子どもの病気の理解と話す内容、子どもの反応とそのサポート
病気や病状の理解
- 病気の理解は困難
- 時間の概念が発達しておらず、先の話は理解できない
- 自分のせいで親が病気になった、がんがうつると考えることがある
- 時間の概念が未発達
- より科学的で詳細な情報を好む
- 原因と結果から病気を理解する
- 『がん』をある程度概念的に理解できる
- 親の病状や体調について理解ができる
- 抽象的、哲学的、生理学的に考える
- 病気や病状を理解できる
- 病状が深刻であれば、死につながることを理解できる
話す内容
- 「 ぽんぽん痛い」「あたま痛い」など、普段使っている言葉で伝える
- 病気は誰のせいでもない、うつらないことを話す
- 子どもの生活に影響することをその都度話す
- 親の気持ち
- できないことと今までどおりできることも話す
- がんは誰のせいでもない、うつらないことを説明する
- 治療や副作用についても説明する
- 病気や治療などの今後の見通し
- 話した後のお互いの思いや日常生活の中で一緒に過ごす時間など
- 病気は誰のせいでもないこと
- 子ども自身の生活(学業、部活など)を維持していいこと
話した後の反応
- 不眠やぐずりなど
- いやいや、ぐずり、親と離れたがらないなど退行現象が見られることがある
- 一見変化がないように見える場合もある
- 親が病気のときに遊んでしまう罪悪感を持つ
- 宿題を忘れる、集中力が低下する。友達とのトラブルなど
- 「良い子」になろうとする
- がんという言葉に敏感になる
- 普段と変わらないように見える
- 病気の話題から距離を置く
- がんという言葉に敏感になり、自ら調べる
- 睡眠障害や食欲滅少/ 食欲過多、落ち込みなど、学業不振、登校しぶりなど
- 普段と変わらないように見える
お子さんへのサポート
- 抱っこなどのスキンシップを多くする
- 「そうだね」と気持ちを受けとめる
- スキンシップを多くする
- 普段の生活をできるだけ維持する
- 楽しく過ごすことが親も嬉しいことを話す
- 子どもにも具体的な役割を与える
- 心配があれば小児科医に相談する
- 子どもの話を聞く機会を増やす
- 親との時間を確保する
- 家事の手伝い、病気の親の手伝いなど具体的な役割を決める
- 学校の先生に状況を話し、支援を得る
- 家庭内の話し合いに子どもを参加させ、子どもの意思を確認する
- 家庭内の役割決める
- 学佼生活や友達と過ごす時聞を確保する
- 親以外に子どもが相談できる大人の存在をつくる
引用:https://hope-tree.jp/wp-content/uploads/2021/01/kodomotohanashite_190623.pdf
がんを伝えるときに意識したい3つのC
子どもに親のがんのことを伝える方法については、国内外でさまざまな手法が示されています。ここでは一つの例として、アメリカのMDアンダーソンがんセンターで作成された、がん患者の子どもを支援するプログラム「KNIT(ニット、Kids Need Information Too)」を紹介します。
1.Cancer(がん)=がんという病気であることを隠さず伝える
最初の「C」であるCancerは、がんであることを隠さず伝えること。“病気“というあいまいな表現をすると子どもは独自の考えや想像を働かせ、かえって不安を増強するといわれています。“がん”という言葉を使って風邪のようにすぐ治る病気とは違うことを知らせることも大事です。子どもの年齢や理解力に応じて、がんの種類、体のどの部分にあるのか、生活にどのような影響があるのかなども伝えましょう。
2.Catchy(伝染)=がんは、うつる病気ではないことを伝える
2つ目の「C」はCatchy。がんは、うつる病気ではありません。大人は理解していても、子どもはそうではなく、「病気」=「ばい菌」=「伝染する(うつる)」=「怖い」という連想が働き、怯えてしまいます。がんはそういう病気ではなく、うつらないことをしっかり伝えることが重要です。
3.Caused(原因):子どものせいではないことを伝える
3つ目の「C」はCaused。“誰のせいでもない”ということを伝えましょう。年齢の低い子どもほど「自分が悪いことをしたから、お父さん/お母さんが病気になってしまった」と思いこむ傾向があり、思春期の子どもであっても「自分が心配させたから免疫が低下して病気になった」などと自分を責めることがあります。がんという病気は、誰のせいでも、何かをしたから/しなかったからなるわけではないことをきちんと伝え、子どもが自分のせいだと思いこまないようにしましょう。
病気について子どもと話すかどうかに正解はなく、考えが変わるのも自然なことです。大切なことは、子どもと接する家族や周りの大人が、病気について子どもと話すことに関する考えや方針を共有しておくことです。何かあればがん相談支援センターにご相談ください。
関連サイト情報:
*がんになった親を持つ子どもへのサポート情報サイト:https://hope-tree.jp/hope-tree/
*迷ったときに手にする本:https://hope-tree.jp/information/cancercare-for-kids-book/
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AYAサポートメンバーにお話聞きました!
がん看護専門看護師 井上 泉子主任
当院では2020年より多職種によるAYAサポートチームを結成。AYA世代の患者さんへの対応を集約化し、患者さんの個別性に合わせた支援ができるように取り組みを行っています。