妊娠・出産を経験した人の半数近くが経験する「骨盤臓器脱」。子宮や膀胱が膣の外に出てしまう疾患で、生活への影響は深刻です。骨盤臓器脱センターでは、婦人科と泌尿器科の専門家が連携し、低侵襲で早期回復が望めるロボット手術を含めた治療法を個別に提案しています。

婦人科・泌尿器科が連携し、骨盤臓器脱の診断・手術を実施
症状の根治を目指す方や、重度の骨盤臓器脱に対応

骨盤臓器脱による不快な症状に悩む女性は多くいますが、適切な治療を受けている人はあまり多くありません。背景には、「臓器が下垂して膣から出る疾患」の存在とその治療法があまり知られていないことや、受診すべき診療科がわかりにくいこと、症状の出る場所がデリケートで人に相談しにくく、適切な治療に結びつかないことなどがあります。保存療法が有効でない重度のケースや、症状の根治を目指したい場合に、紹介先に悩むかかりつけ医の先生方も少なくありません。
そこで当院では、骨盤臓器脱の啓発や、診断から治療、リハビリまで一貫して提供できる環境の構築をめざし、産婦人科と泌尿器科による「骨盤臓器脱センター」を立ち上げました。当センターでは、地域のクリニックを受診した骨盤臓器脱の患者さんの中でも比較的症状が重い方を受け入れて診断し、手術適応があれば積極的にロボット支援仙骨膣固定術(RASC)を行っています。

Column 「骨盤臓器脱」

不快な症状でQOLが低下、中高年女性は要注意

骨盤臓器脱は、出産や加齢、肥満などによって骨盤底部の筋肉や靭帯が弱くなり、子宮、膀胱、直腸などが膣の入り口から外に出てしまう疾患です。尿や便が出にくくなったり、下腹部や膣に常に違和感があったりして生活の質が著しく低下しますが、羞恥心から他者に相談しづらく、一人で悩んでいる人が多いのが現状です。

骨盤臓器脱のイラスト
膣の入口から子宮、膀胱、直腸などが出てしまう

低侵襲で再発率が低い、ロボット支援手術が可能

ロボット支援仙骨膣固定術は、下がってしまった膣や子宮を仙骨(背骨の下の骨)に固定し、本来の正しい位置に戻す手術です。骨盤の奥はとても狭く、血管や神経が多く通っているため、非常に繊細な作業が必要になります。そのため、この手術は、十分な経験と専門的な技術をもつ医師が担当します。ロボット支援の手術では、立体的で拡大された映像と、人の手以上にしなやかに動くアームを使って操作します。これにより、骨盤の奥までしっかり確認しながら、細やかな縫合や処理をより安全に行うことができます。結果として、臓器をより自然で安定した形に戻すことができ、再発を抑えやすいのが特徴です。
また、膣から行う手術や腹腔鏡による仙骨膣固定術と比べても、ロボット支援手術は骨盤の深い部分まで見やすく、細かな操作がしやすい点が大きな利点です。体への負担も比較的少なく、術後の回復が早い方も多くみられます。高齢の方や基礎疾患をお持ちの方でも、状態によっては十分に実施を検討できる手術といえるでしょう。

合併症や再発リスク管理も、他科と連携し一貫して対応

ロボット支援仙骨膣固定術は術後の合併症も少ないですが、ゼロではありません。再発も同様です。そのため、当センターでは術後の長期フォローにも力を入れ、再発や合併症のリスク管理と早期発見に取り組んでいます。特に、正しく行うことによって再発予防に有用な骨盤底筋体操については、専門の理学療法士がマンツーマンでやり方を指導。退院後のリハビリ通院も推奨しています。「膣や下腹部、股の間などに異物感や不快感がある」「排尿トラブルがある」「脱出した臓器が擦れて出血する」といった症状があるときは、我慢せず病院を受診し、適切な治療で健康寿命の延伸をめざしましょう。当院では、初診から術後フォローまでを切れ目なく支える「骨盤底総合診療モデ ル」の構築を目指し、地域の医療機関との連携強化にも努めてまいります。

Message

塚﨑 雄大写真

残尿感や残便感は、年のせいと諦めてしまう方が多い症状です。まずは骨盤臓器脱という疾患があり、治療できることを知ってください。そして、根治をお考えの際は、骨盤臓器脱センターを頼っていただければうれしいです。

骨盤臓器脱は、女性なら誰しも発症する可能性があり、珍しいものではありません。手術をすれば根治も見込め、健康寿命の延伸が期待できます。
一人で我慢せず、まずはかかりつけ医の受診をおすすめします。

井上 泰写真