子宮筋腫による症状で悩む患者さんにとって、治療の選択肢は多岐にわたります。NTT東日本関東病院では、産婦人科医が中心となり、患者さんにとって最善の治療法を提供できるよう取り組んでいます。特に、カテーテルを用いた子宮動脈塞栓術(UAE)を選択する場合には、放射線科医が専門的な知識と技術を駆使して治療を行います。
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子宮筋腫とは?
子宮筋腫は子宮の筋肉にできる良性の腫瘍で、30歳以上の女性のおよそ3割に認めると言われています。腫瘍の大きさや位置によっては過多月経、月経痛、腹部圧迫感、頻尿などの症状を来たします。また不妊症の原因になることもあります。 子宮筋腫は、卵巣から分泌されるホルモンの影響を受けるため、閉経前の女性では筋腫が大きくなることがあります。また更年期以降には縮小する傾向があります。
子宮筋腫の治療法とその選択
子宮筋腫は基本的には良性腫瘍であり、症状が乏しければ大きさに関わらず経過観察が可能です。一方過多月経などの症状がある場合は手術希望や妊娠希望の有無により以下の治療(薬物療法・子宮筋腫核出術・子宮全摘術・子宮動脈塞栓術(UAE))が提示されます。
治療方法 | 特徴 | 適応 |
---|---|---|
薬物療法 | 鎮痛剤や貧血に対する鉄剤などを使用する対症療法と、GnRHアゴニストというホルモン剤を使用して月経を止め筋腫を縮小させる内分泌療法に分けられます。GnRHアゴニストは偽閉経療法ともいわれ、骨密度低下などを予防するために投与期間が制限されています。また治療終了後筋腫は再増大し症状も再燃します。 | 対症療法は軽度の症状を持つ患者さんや、手術を避けたい患者さんに適しています。 内分泌療法は術前の患者さんや閉経間近の患者さんに使用します。 |
子宮筋腫核出術 | 子宮筋腫だけを摘出する手術です。子宮を残すことができるため、将来的に妊娠が可能です。ただし、筋腫の位置や個数によっては取り切れないこともあるため再発する可能性があります。 | 妊娠を希望する患者さんや、薬物療法が効果を示さない場合に適しています。 |
子宮全摘術 | 子宮全体を摘出する手術です。筋腫による症状を完全に取り除くことができます。また将来的な子宮頸がん、子宮体がんになる心配もありません。妊娠は不可能になり、手術後の回復期間が必要です。卵巣機能は温存できるので更年期障害はあまり起きません。 | 筋腫が多数存在する場合や、他の治療法が効果を示さない場合に適しています。 |
子宮動脈塞栓術(UAE) | カテーテルを用いて筋腫の血流を遮断する治療法です。症状軽減のために筋腫のサイズを小さくすることを目的とします。子宮は温存することができ、早期に社会復帰可能なのが特徴です。ただし、再増大や感染症など起きた場合は手術を含めた追加治療を要する場合があります。術後は治療の反応で患部に一時的に痛みが生ずるため、痛み止めの点滴を行います。 | 手術を希望しない患者さんや、他の疾患により外科手術の負担が大きい患者さんに適しています。 また、将来的に妊娠をご希望の患者さんにはおすすめしていません。 |
子宮動脈塞栓術(UAE)治療の概要
UAE(Utery Artery Embolizationの略 子宮動脈塞栓術)は、カテーテルを用いた血管内治療法であり、子宮筋腫の血流を抑えることにより腫瘍の縮小と症状改善が期待できます。UAEでは子宮を温存することができ、入院期間が比較的短いので患者さんの社会復帰が早い点が特徴です。
治療では、足の付け根にある血管から、経約2mmのカテーテルと呼ばれる細いチューブを挿入します。そして、筋腫に栄養を供給する子宮の血管までレントゲン(X線)を見ながら到達させ、血流を抑える塞栓剤 を注入します。
治療後は数か月かけて徐々に子宮筋腫は縮小しますが、症状はそれより早期に実感できる場合が多いです。
手術を希望されない方や基礎疾患などがあり外科手術の負担が大きい方が対象となります。
【治療・入院について】
入院期間:
通常、入院期間は4泊5日程度です。
治療時間:
治療は約2時間を要し、治療後はベッド上での安静が必要です。
術後のケア:
術後は薬や点滴を行い、治療の反応で生じる腹痛を緩和します。

子宮筋腫は良性の腫瘍ですので必ずしも治療が必要な疾患ではありません。当院では最初に悪性腫瘍ではないことを各種検査で確認したうえで患者さんの希望やライフステージに合わせて個別に治療方法を相談しております。検査やご相談だけでも結構ですので皆様の受診をぜひお待ちしております。
当院では「より低侵襲なカテーテル治療」を目指し多職種連携を意識して診療にあたっています。女性専用病棟があるのも特徴的です。子宮筋腫のカテーテル治療は欧米でも広く浸透している治療法のひとつで、子宮を手術でとらなくても症状改善が期待できます。受けてよかったと患者さんに思ってもらえるような治療を提供できるよう産婦人科の先生方と協力しながら誠心誠意努めてまいります。

お話を聞きました!

産婦人科部長 塚﨑 雄大
2003年信州大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、虎の門病院、埼玉県立がんセンター、公立昭和病院を経て2024年よりNTT東日本関東病院産婦人科部長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医。

放射線科医長 大澤 まりえ
2010年聖マリアンナ医科大学卒業。東京北医療センター、帝京大学医学部附属病院などを経て、2018年より現職。IVR(画像下治療)を専門とする医師。日本医学放射線学会放射線診断専門医、日本インターベンショナルラジオロジー学会IVR専門医。