AYAとはadolescent and young adult(思春期・若年成人)の略で15歳から39歳までの世代を指す用語です。AYA世代のがんでは学生から社会人、子育てとライフステージが変化する年代であり、治療に際してこの世代特有の課題があります。
当院はがん診療連携拠点病院であり、AYA世代の中で思春期世代は少ないものの、若年成人世代のがん症例は多く、そのため2020年よりAYAサポートチームを編成し、AYA世代の患者さんの診療における課題に対してワンチームで取り組んでおります。
産婦人科においては婦人科がん患者さんの妊孕性(妊娠できる可能性)温存や、他科で診療を受けているがん患者さんの妊孕性温存が主な課題になります。
AYA世代婦人科がんに対する妊孕性温存の取り組み
子宮がん(前がん病変をふくむ)や卵巣がん(境界悪性腫瘍をふくむ)では病状によっては子宮や卵巣を温存できますが、一定の頻度で再発をきたすことが知られており、そのため慎重な経過観察が必要になります。再発時には手術や化学療法、放射線治療などが行われますが、そのようなケースの多くでは妊孕性が失われてしまいます。
ガイドラインなどに基づいた妊孕性温存治療を行うことはもちろんですが、再発を念頭に置いて患者さんによく病状をご説明することも重要だと考えております。そのうえで可能であれば再発に備えた早期の妊娠をお勧めしております。
AYA世代の他科のがん患者さんに対する妊孕性温存の取り組み

女性の患者さんで悪性腫瘍に対する化学療法や放射線治療を行う場合、卵巣機能の低下とともに妊孕性が失われてしまうことが懸念されます。すでに月経がはじまっている患者さんであれば卵子凍結を行うことができますし、結婚されている方であれば受精卵を凍結することもできます。一方月経開始前の若年の患者さんや早急な治療開始が必要で卵子を採取する時間的余裕がない方に関しては腹腔鏡下に卵巣組織を採取(当院)し凍結(他施設)することでの妊孕性温存を試みています。卵巣組織凍結は卵子凍結や受精卵凍結に比べ妊娠に至る可能性がまだ低い新しい治療ですが、近年では生児が得られた報告も徐々に増えております。当科では近隣の施設と協力しながら卵巣組織を採取する体制を整えております。
また近年ではがん診療も症例に応じて個別化されるようになってきておりますが、その中で一部の乳がんや卵巣がん、前立腺がんなどでは遺伝的な背景により発症していることが明らかになり、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)と称されています。がん発症を機に患者さんやその家族がHBOCであることが判明した場合、将来的な卵巣・卵管がんを発症するリスクが高いため、慎重な経過観察(サーベイランス)や発症予防目的での卵巣や卵管の摘出術を提示しています。AYA世代でこのような手術を行った場合は当然妊孕性の低下・喪失になりますので、個々の患者さんのライフプランに合わせて必要な時期までは経過観察を行い、時機を見て予防的摘出術を提供できるように努めております。
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当院1F中央玄関を入り、右側の総合案内の電話受付へお越しいただき、受付の電話で②番を選択し、呼び出してください。

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産婦人科部長 塚﨑 雄大
2003年信州大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、虎の門病院、埼玉県立がんセンター、公立昭和病院を経て2024年よりNTT東日本関東病院産婦人科部長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医。