「ハイブリッド」とは、異なる要素が組み合わさることで、より価値の高いものが生み出されること。ハイブリッドオペ室はまさに、内科による血管内治療と外科的治療を同時に実施することで、患者さんの負担軽減を実現する先進的な設備です。普段、患者さんがあまり足を踏み入れることのない内部の様子をご紹介します。
クリーンな環境で画像下治療が可能
ハイブリッドオペ室は、血管撮影装置が備わった手術室です。この設備のメリットは、通常の手術室と同等の清潔度が保たれた状態でカテーテル治療ができること。カテーテル室はもちろん清潔ではありますが、外科的治療を行えるほどクリーンではありません。もう一つのメリットは、画像の精度が抜群に良いこと。エックス線撮影された血管画像はすぐにモニターに転送され、そこからCT画像や3D画像を構築することも可能です。治療の精度と安全性の向上に一役買っています。当院では2020年にハイブリッドオペ室を導入して以来、循環器領域だけでなく整形外科や脳神経外科などさまざまな診療科で活用。ハイブリッドオペ室では循環器内科によるカテーテル治療と、脳神経外科による手術の同時施行も可能です。他にも外科、消化器外科、泌尿器科など、画像下の治療を行う幅広い領域での利用が期待されます。
大画面のモニター
55インチのハイビジョンモニターに、3次元的に撮影された血管画像が映し出されます。枝分かれした微細な血管もクリアに観察でき、精度の高い治療が可能になっています。
血管撮影装置
カテーテルを目的の血管や臓器まで挿入し、造影剤を注入した後、この装置で撮影しながら血液の流れや状態を確認していきます。当院では、ロボティックアームを持つケーブルレスの床置き式で、低被ばくでありながら高画質の画像が得られる先端モデルを導入しています。
ハートチームによる垣根を越えた連携
ハイブリッド手術がうまく機能するためには、循環器内科医師、心臓血管外科医師、麻酔科医師、放射線科医師、看護師、放射線技師、臨床工学技士による「ハートチーム」の連携が必要不可欠です。当院は以前、手術室とカテーテル室とでスタッフが別々に動いていました。また、カテーテル治療では循環器内科医師が自ら静脈麻酔を行うため、麻酔科医師との関わりも多くはありませんでした。しかし、現在は両者の垣根がなくなりつつあり、看護師がどちらの部屋も兼務するほか、両方の状況をチーム全体で確認できるようモニターも統合しました。ハイブリットオペ室を核にして、人的にもシステム的にも強固なネットワークを築き、ますます高度で質の高い医療の提供が可能となっています。
先生にお話を聞きました!
循環器内科部長 山﨑 正雄
1988年徳島大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、三井記念病院を経て、2004年にスタンフォード大学医学部循環器部門に留学。2007年当院に入職。得意分野は心血管および末梢動脈のインターベンション治療。