NTT東日本関東病院 循環器内科では、心臓が細かく動いて痙攣する状態「心房細動」(不整脈)の最新の治療法であるパルスフィールドアブレーション(PFA)を2025年4月より導入いたします。心房細動に悩む多くの患者さんに”熱”に依存しない新しい治療法を提供します。
心房細動とは

心房細動とは、心房の中に非常に多くの不規則な電気信号が起こり、心房が痙攣のように1分間に500~600回(通常60~100回)小刻みに震える状態になる不整脈です。
動悸、めまい、脱力感、胸の不快感、息苦しさといった症状が出ることがありますが、その一方で自覚症状のない場合もおよそ半分と言われています。心房細動を発症すると、脳梗塞や心不全、認知症の発症リスクが高まることが報告されており心房細動が見つかったら早めに治療を受けることが大切です。
心房細動の治療法
心房細動の原因は生活習慣病です。食事や運動、喫煙習慣や睡眠などの生活習慣の改善、高血圧・糖尿病・睡眠時呼吸障害などの生活習慣病のコントロールが重要です。
主な治療方法は薬物療法、もしくはカテーテルアブレーションとなります。
薬物療法
脳梗塞リスクにより抗凝固療法が必要となります。抗不整脈薬により心房細動を安定した状態にします。一部の方は内服薬の継続で正常な脈を維持できる場合があります。
カテーテルアブレーション
カテーテルアブレーションとは、カテーテルという細い管を血管を通じて心臓に入れ、心臓の筋肉の一部を焼灼して不整脈の原因となる異常な電気信号の流れを遮断する治療法です。心房細動の場合では左心房の肺静脈周囲を焼灼します(肺静脈隔離術)。薬物療法と比べて非常に高い効果があり、病状が初期であれば8割以上の方で心房細動がみられなくなります。
最新の治療「パルスフィールドアブレーション(PFA)」について
パルスフィールドアブレーションは、不可逆的電気穿孔法(IRE: Irreversible Electroporation)と呼ばれる技術を応用した治療法です。この治療では、静脈から心房に入れたカテーテル(細い管)の電極間に高電圧をかける事でパルスフィールドを形成します。これにより、肺静脈近くの筋肉細胞膜に回復不能な小さい孔を空け、細胞死を引き起こします(不可逆的電気穿孔)。この方法で。心房細動を引き起こす異常な電気信号を遮断します。
従来の高周波焼灼や冷凍焼灼による“熱性”アブレーションでは、熱を使うため、周辺の心筋や心臓周囲にある食道や横隔神経、肺静脈といった組織への損傷リスクがありました。また焼灼に伴う炎症も問題になる場合がありました。しかしパルスフィールドアブレーション(PFA)は“非熱性”アブレーションのため、周辺組織を温存しながら、ピンポイントで治療を行うことができ、炎症も生じないことから急性期の心膜炎や遠隔期の肺静脈狭窄を避けることができます。また先行研究では従来の治療と比べて治療時間が短くなることも確認されています。
当院では従来より質の高い治療を心がけて参りましたが、PFAという最新の治療機器を用いて、これまで以上に安全性の高い高品質の治療を提供いたします。心房細動でお困りの方はぜひご相談ください。
先生にお話を聞きました!

循環器内科 医長 佐藤 高栄
1995年東北大学医学部卒業。仙台市立病院、東京女子医科大学病院、仙台循環器病センター、埼玉県立循環器呼吸器病センターを経て、2011年からNTT東日本関東病院勤務。日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医、日本不整脈心電学会認定専門医。