1. ホーム
  2. トピックス
  3. 泌尿器科の志賀医師が、アボットジャパン株式会社 情報サイト「メディカルジャーニー」に掲載されました

泌尿器科の志賀医師が、アボットジャパン株式会社 情報サイト「メディカルジャーニー」に掲載されました

泌尿器科 部長の志賀 淑之医師が、アボットジャパン株式会社 情報サイト「メディカルジャーニー」に掲載されました。

タイトル:「医療パフォーマンスを革新するXRテクノロジー」
https://www.integratinghealth.abbott/article/innovation/holoeyes.php
※記事全文及び動画を閲覧するには、会員登録が必要です。(医療従事者向け)

「医療パフォーマンスを革新するXRテクノロジー」【抜粋転載】

VR/MR技術で、画像診断データの価値を高め、医療の質の向上を実現

外科医でありHoloeyesのCOOでもある杉本真樹氏が開発した「Holoeyes XR」は、患者の画像データをVR(仮想現実)化し、MR(複合現実)技術も活用することで、外科医の手術計画、術中のナビゲーション、術後の振り返りをサポートします。このシステムが、実際の手術でどのように活用されているかを取材するため、同システムを手術支援ロボットによる前立腺がんの手術で活用しているNTT東日本 関東病院 泌尿器科部長 志賀淑之氏の手術を見学。手術後に杉本氏と志賀氏から話を聞きました。

Holoeyes XRとは何か

杉本:患者さんのCT、MRIの画像データをカスタマイズして、VR用の3Dデータを生成します。そのデータをVR機器やMR機器で閲覧すると、3次元空間内で患者さんの臓器の状態を、手に取るようにして確認できます。
Holoeyes XRは手術前の計画、術中のナビゲーション、術後の確認などに使われています。また、若いドクターや研修医、学生の教育用、ほかにも、患者さんの説明にも活用されています。

Holoeyes XRの特徴

杉本:MR(複合現実)用ゴーグルを通して確認できるのは、手術室内の様子だけではありません。VR化された臓器の映像も映し出されるので、装着者は手術室と臓器の状態、両者が「複合した現実」を確認できるわけです。これを実際に体験してみると、手術室の中に臓器が浮かんでいるような感じを受けます。
臓器は、部屋いっぱいの大きさに見えるように調整されていて、例えば装着者が2歩前に進むと臓器の内部にある腫瘍が見えてくる。また、2歩右に進むと動脈がある。装着者は、臓器の内部の状態を「歩きながら」確認できるのです。執刀医にとって、術前に記憶した臓器の状態や手術の手順を、手術中に瞬時に思い出せることが重要です。患者さんの画像データをモニターで見るよりも、臓器の周りを歩き回る方がよく理解できる。体の動きと視覚で捉えた立体を相関させることで、記憶に深く刻まれるんですね。より安心で安全な手術が可能になるわけです。

Holoeyes XR導入の成果1

難しい症例ほど出血量が減り、手術時間も短縮

志賀:私は泌尿器科医として、手術支援ロボットによる前立腺がん手術を800例以上担当してきました。ロボット手術は、従来の腹腔鏡手術と比べると鉗子を自由にかつ精密に操作できるだけでなく、カメラの映像が3Dであるというメリットがあります。そのため、開腹手術と同等かそれ以上にがんの制御率が向上していると感じます。
このように、前立腺がんの治療においてアドバンテージがあるロボット手術にHoloeyes XRを組み合わせると、術前に臓器の内部や臓器のがんを栄養している血管の位置などを確認できます。「ここに血管がある」とわかった上で執刀しているので、安心して進めることができる。意思決定力が増し、迷うことなく手術できるようになりましたね。そのせいか、難しい症例であればあるほど出血量が少なく短時間で完了しますし、がんの制御率も向上しているという実感があります。

Holoeyes XR導入の成果2

迷いなく、安心して手術を進められる

志賀:従来は、術前に2次元のCTスキャンやMRIの画像を見て、頭の中で3次元化していました。車の運転に例えると、印刷された地図を見ながら、頭の中でルートをイメージするような感じでした。
一方、Holoeyes XRを使った手術は、3D表示のカーナビを見ながら運転するような感覚です。3D表示を使えば、例えば右折する場合に、カーナビの画面上で交差点にはどんな建物があるかを確認できるので、迷いなく安心して右折できます。同じようにHoloeyes XRを使うと、正確なイメージをもって手術に臨めるし、手術を進める際に注意すべきポイントも確認できる。例えば血管の走行なども確認できるので、安心して手術を進められるのです。

Holoeyes XR導入の成果3

手術後の振り返りにも有効

志賀:Holoeyes XRを活用すると、手術中に記録した自分の手の動きと臓器の立体映像をマッチさせることができます。マッチさせた画像を見れば、「あの動きは正しかったか?」「違う方法があったのではないか?」と振り返りができます。
Holoeyes XRは術前のシミュレーションや術中のナビゲーションだけでなく、術後の振り返りや教育にも活用できる。この3つのことが、1つのデバイスで可能になると感じています。

医療チームにとってのHoloeyes XRの有効性に関して

志賀:Holoeyes XRを活用すると、VR化された臓器の映像を複数名で共有することもできます。この機能を使うことで、私の手術プランを助手や看護師さんと共有できる。手術中、私の次の行動がわかっているので、難しいポイントでも落ち着いて仕事ができると思います。
また、手術中に記録した術者の手の動きと臓器の立体映像をマッチさせた画像を生成できる機能もあります。記録したデータは手術後に閲覧できるので、自分自身の振り返りはもちろん、若手医師や医学生などの教育にも活用できます。

杉本:若いドクターとベテランのドクターが同じ言葉で会話できるようになった点も大きいと思います。教える方は、どう教えればいいかわからなかったし、教わる方も、何を質問すればいいかわからなかった。ところが、立体像を共有できるようになって、例えば「ここからここ」といったコミュニケーションが可能になったのです。

これまで、医師は2Dで解剖を学んでいましたが、3Dから入った方が早く理解できることがわかってきました。また、手術の技術を学ぶには、手術中に外科医から学ぶ「オン・ザ・ジョブ・トレーニング」が必要だと言われてきましたが、Holoeyes XRのように、手術室の状況や患者さんの臓器の状況を的確に表現できるシステムがあれば、手術室の外でも手技を学べるようになると思います。
さらに、手術に参加できないドクターに教育の場を提供できますし、リタイアした外科医が自宅で手術を学べる環境づくりも可能になる。休職中の女性の外科医が社会に参加できるきっかけにもなるので、医師の働き方改革に貢献できるかもしれません。

患者とのコミュニケーションへの活用

杉本:患者さんからは「とてもわかりやすい」というご感想が多いですね。平面的なモニターで画像を見るときに比べると、奥行きや立体感があるので、自分事として捉えられるのだと思います。また「質問しやすくなった」と言ってくださる患者さんもいます。立体的に捉えることで、病状の理解が深まるからでしょうね。
医師の立場で言うと、患者さんとスムーズに病状の共有ができるようになりましたし、手術プロセスなどの説明もしやすくなったと感じます。

杉本:医療はサービスなんですね。医師は、目の前の患者さんを助けることに100パーセント意識を向けるのではなく、もう少し社会を捉える必要があるのではないかと。言い換えると、ビジネス化という視点も必要だと思います。限られた患者しか助けられない高度な技術の習得に時間をつかったら、多くの患者を救うことはできません。ほかにも手術時間を短縮したり、若いドクターでも高度な治療ができるような機器を開発したりすることが、今後は求められるでしょう。そのためには、医師が病院の外に出て、外部の人とのコミュニケーションをとることだと思います。そうすれば新たな技術や知識、そして人材が医療の世界に入ってくるでしょうし、結果として「医療の壁」を取り払うことができるのです。

  • ※製品名は各社の登録商標です。
  • ※各製品に関するお問い合わせは、メディカルジャーニーではお受け致しかねます。あらかじめご了承ください。
  • ※アボットジャパン株式会社 情報サイト「メディカルジャーニー」より抜粋転載

プロフィール

杉本 真樹
医師/医学博士
帝京大学冲永総合研究所 特任教授
Holoeyes株式会社 取締役COO

1996年帝京大学医学部卒業。国立病院機構東京医療センター外科、米国カリフォルニア州退役軍人局パロアルト病院客員フェロー、神戸大学大学院医学研究科消化器内科 特務准教授を経て現職。外科医として臨床現場から医療・工学分野での最先端技術の研究開発と医工産学連携による医療機器開発、医療ビジネスコンサルティング、知的財産戦略支援や科学教育、若手人材育成に力を入れる。医療・工学分野での最先端技術開発で多数の特許、学会賞などの高評価を受けている。

志賀 淑之
NTT東日本 関東病院 泌尿器科 部長

1994年 筑波大学医学専門学群卒業。99年筑波大学附属病院チーフレジデント。その後日製日立総合病院、虎の門病院、聖路加国際病院の泌尿器科を経て、2010年に東京腎泌尿器センター大和病院 院長、2015年にNTT東日本 関東病院 泌尿器科部長。専門分野は、ロボット手術(前立腺全摘除術、腎部分切除術)、ナビゲーション手術、VR手術など。